病院のある一室。
『はたけカカシ』
その名前を見つけ、ガラリとドアを開けた。
「あれ?久しぶりだね、サスケ」
自分の姿を見て目を丸くしたのは、銀色の髪を持つ男。
「‥あぁ」
「何?見舞いにでも来てくれたの?」
「‥誰があんたのためにわざわざ来るかよ」
「うわ、酷いねぇ。昔は素直で可愛かったのに」
「‥一生退院できない体にしてやろうか」
サスケが怒りを込めて低く呟けば、カカシは慣れたようにくすくすと笑った。
年上の幼なじみ、所謂近所のお兄さんであったカカシ。
そんな彼は自分のことをよく知っていて、認めたくはないが今まで数え切れないほどお世話になった人だった。
「そういえばサスケ、俺のクラスの担任代理になったんだって?」
話題を変えるように、カカシは楽しそうな顔で問い掛けてくる。
それと同時に、ベッドの横に小さな椅子を用意された。
「‥知ってたのか」
サスケは答えながら、静かに椅子へ腰を下ろした。
「少し前にね。代理の先生が来ることは知ってたけど、まさかお前だとは思わなかったよ」
「‥俺もあんたの代理になるとは思わなかった」
彼が高校で教師をしていることは知っていたが、どこの高校なのかサスケは全く知らなかった。
「どう?俺のクラスは」
「‥面倒な生徒が多い」
「最初はそうだろうね。でも、あのナルトが最近は少し真面目になったって聞いたけど?」
「‥うずまきが‥真面目になった‥?」
サスケは眉を寄せる。
ノートはとらないし、授業をサボることだってあると聞いた。
そんな奴のどこが真面目になったというのだろうか。
「最近、毎朝遅刻してないって聞いたよ。それに、珍しく居残りも真面目にやってるって。違うの?」
「‥‥いや、その通り、だ」
全然知らなかった。
少し前のナルトがそこまで問題児だったとは。
「‥サスケが代理として来てから、ね」
カカシが意味深にニヤニヤと笑う。
「いきなり何だよ、気色悪い」
サスケは訝しげにカカシを見るが、何を考えているのかはさっぱり分からなかった。
「青春ってやつだよ、きっと」
「は?意味分かんねぇ」
「そのうちサスケにも分かるよ。ま、年明けからは復帰できるから、それまでよろしくね?サスケ先生」
「‥‥あぁ」
年明け。
つまりはあと、1ヶ月半。