「君さ、いい加減素直になったら?」
チャイムとともに昼休みが始まり、サスケは昼食を買うために購買へ向かう。
その途中、同じく購買へ向かおうとしていたクラスメイトの水月が声をかけてきた。
サスケが何の話だと視線を向ければ、水月にはやれやれとため息をつかれる。
「サスケ、今日は朝から苛々してるでしょ?」
「‥別に苛ついてなんかねぇよ」
「僕に嘘ついたってバレバレだからね?またどうせ大好きな幼馴染が原因なんでしょ」
勝手に自分の横に並ぶ水月は、にやにやと楽しそうにサスケの顔を覗き込む。
サスケのことは何でもお見通しだと言わんばかりの態度が気に入らない。
決して誰にも伝えたことのない秘めた想いを、いつも水月は当たり前のように口にするのだ。
自分はそんなに分かりやすいのか。
「あんな奴、大嫌いだ」
昨日偶然にも見てしまった光景を思い出し、サスケは不快感をあらわにしながら舌打ちする。
ああいう光景を見たのは初めてではないのに、いつまで経っても慣れることはない。
むしろ不快感は日に日に増していくように思う。
「大嫌い、ねぇ。僕から見れば君の大嫌いは大好きにしか聞こえな‥‥あ、噂をすれば」
横にいる水月が不意に立ち止まり、サスケも思わず立ち止まる。
水月の視線を辿れば、購買の前にはパンを両手に抱える幼馴染の姿があった。
しかも、数人の女子に囲まれながら楽しそうに話している。
昨日あいつの部屋にいた女とは違う。
無意識にそう考えた自分に嫌気がさす。
「前から思ってたけどさ、ナルトって意外と人気あるよねぇ。うかうかしてたら手遅れになっちゃうよ?いいの?」
あくまで楽しそうな水月をサスケは小さく睨む。
いいわけねぇだろ。
けど、どうしようもならないことだってあるのだ。
どんなに想っても、あいつが選ぶのは自分ではない。
「‥あれ?サスケ?」
相変わらず女子たちと話しながら、ふとこちらを見たナルトがサスケに気付く。
ナルトはすぐに女子たちと別れ、両手のパンを落とさないようにしながら小走りでやって来た。
それに気付いた水月が変わらずにやにや笑いながら、サスケの肩に腕をまわして引き寄せ、小声で呟く。
「僕先に購買行ってるよ。大好きな幼馴染と二人っきりになりたいんでしょ?」
「‥てめ、誰もそんなこと言ってねぇだろうが」
「口では言ってないけどね、君の顔にはそう書いてあるよ」
「テキトーなこと言ってんじゃねぇ」
「あーはいはい。今日はそういうことにしといてあげるよ」
じゃあまたあとで〜と、水月はひらひらと手を振る。
そんな水月と入れ違いに、ナルトはサスケの横に並んだ。
ちらりと水月を振り返る。
「‥サスケってさ、水月とすげぇ仲いいよな。いっつも一緒にいるし」
「別に、席が近いから勝手に絡んでくるだけだろ」
「‥でも何も言わずに一緒にいるんだから、サスケだって水月のこと‥気に入ってんだろ?」
妙に真剣な表情で問われ、いきなり何なんだと思う。
ナルトが何を言いたいのかよく分からない。
「気に入るとか、そんなこと考えたことねぇよ。何が言いてぇんだ、お前は」
呆れたように言えば、ナルトは、そりゃあそうだよなぁ‥と曖昧に笑う。
ますますわけが分からない奴だと思いながら、何故よりにもよって自分はこんな奴を‥と自然とため息が出る。
「‥サスケ?」
ため息に気付いたらしいナルトが、サスケの顔をじっと見つめる。
「‥何だよ」
「いや、別に‥。サスケも、これから購買行くのか?」
「あぁ」
「あ、じゃあさ。俺ここで待ってるから、サスケ買ってこいよ」
「は?何でお前が待つんだ」
「たまには一緒に昼飯食おうと思ってさ!クラス違うとなかなか会えないし。いいだろ?」
へへ、と笑うナルトに、内心舌打ちをしながらもサスケは小さく頷いた。
恋人として、この幼馴染と想い合うことはできなくても、
こうして自分は当たり前のように彼のそばにいられる。
それを素直に嬉しく感じるとともに、やはりもっと、と貪欲に彼を求めてしまう自分が、
確かに存在していた。
end
短編小説一作目がこれかよ、なナル→←サスすれ違いラブです。笑
せっかくなので、ネタができたらハッピーエンドな続編も書けたら‥いいなぁ‥(←あくまでただの願望)