こんなのは、なんだか、酷く僕らしくない感情だと思った。 執着。 固執。 拘泥。 全ての根底に潜む独占欲。 どろどろする。 熱を受けたチョコレートみたいに心臓が溶けそうだ。 ざらざらする。 流水を浴びた砂糖菓子みたいに頭の中が崩れそうだ。 ずきずきする。 甘く甘く膨らんだパイみたいに、息が詰まりそうだ。 「……あー……」 「どうしたの、ジュン」 「いや、どうもしない……」 「……そう」 なら良いけど、呟いて、メアリーは紅茶を少し口にする。 迷走した思いは会話によって少しは薄れて、大きく息を吐くとなんとか誤魔化せそうだった。 もう一度だけ深呼吸して、なるだけにこやかに彼女に話しかける。 素っ気ない返答。彼女と親しくなればなるほど返しは端的になると、ようやく理解した。 「ふうん、じゃなくてさメアリー。一緒に行こうよ。ハルミナさんも喜ぶよ」 「……ハルミナさんと買い物行くと、着せ替え人形にされるんだもん……」 「ああ……確かにそうだろうけれど」 確かにそうだろうけれど、彼女はそれ以外に思うところはないのだろうか。そう、例えば。 「僕と二人で行ったって、僕が着せ替え人形になるんだもん。負担は分担しようよ」 「負担と思うなら買い物断れば?」 「買い物には行きたいの」 「……そうか」 特に興味なさそうに、メアリーはまた紅茶を飲む。揺るぎなく無関心だ。ちょっと悔しいとすら思う。 お手製のチョコバナナシナモンケーキに手を伸ばして、しっとりした甘味を堪能する。 いつもちゃんと優しいから、甘いものが好きなのだなあ、となぜだか身に染みた。 |