※久しぶりなので甘ったるく
 07.21 23:06



 こんなのは、なんだか、酷く僕らしくない感情だと思った。

 執着。
 固執。
 拘泥。
 全ての根底に潜む独占欲。


 どろどろする。
 熱を受けたチョコレートみたいに心臓が溶けそうだ。

 ざらざらする。
 流水を浴びた砂糖菓子みたいに頭の中が崩れそうだ。

 ずきずきする。
 甘く甘く膨らんだパイみたいに、息が詰まりそうだ。



「……あー……」

「どうしたの、ジュン」

「いや、どうもしない……」

「……そう」


 なら良いけど、呟いて、メアリーは紅茶を少し口にする。

 迷走した思いは会話によって少しは薄れて、大きく息を吐くとなんとか誤魔化せそうだった。

 もう一度だけ深呼吸して、なるだけにこやかに彼女に話しかける。
 素っ気ない返答。彼女と親しくなればなるほど返しは端的になると、ようやく理解した。


「ふうん、じゃなくてさメアリー。一緒に行こうよ。ハルミナさんも喜ぶよ」

「……ハルミナさんと買い物行くと、着せ替え人形にされるんだもん……」

「ああ……確かにそうだろうけれど」


 確かにそうだろうけれど、彼女はそれ以外に思うところはないのだろうか。そう、例えば。


「僕と二人で行ったって、僕が着せ替え人形になるんだもん。負担は分担しようよ」

「負担と思うなら買い物断れば?」

「買い物には行きたいの」

「……そうか」


 特に興味なさそうに、メアリーはまた紅茶を飲む。揺るぎなく無関心だ。ちょっと悔しいとすら思う。

 お手製のチョコバナナシナモンケーキに手を伸ばして、しっとりした甘味を堪能する。
 いつもちゃんと優しいから、甘いものが好きなのだなあ、となぜだか身に染みた。





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