照啓小話。
 2013.07.11 Thu 21:13

先日ツイッターの診断メーカーで

亜風炉照美は喉からぽろぽろと金平糖が出てくる病気です。進行すると強い痛みを伴います。トカゲの尾が薬になります。 shindanmaker.com/339665

というのが出てうっかり萌えた挙げ句にやっちまった奇病パロ照啓。
上記の病気になった照美とトカゲの啓たんの話しです。

久々の照啓がパロディで申し訳ないです〜でもすっごく楽しくてやっぱり照啓だいすきだなと思いました。あと何といっても書きやすいんですよね〜楽しいし書きやすいしかわいいし良いとこばっかりの照啓すげぇや。
こういうパロディとか不思議系の話とかふわふわした話はジョジョより稲妻の方が書きやすいんですが何でですかね、人がしなないからですね!中学生だしね!超次元だしね!!!!



小話ですが長いので畳んであります。
続きからドウゾ。


むかしむかしあるところに、トカゲがいました。トカゲはぱっと見は人間でしたが、関節を覆う皮膚はつやつやと鱗のかたちをしていましたし、尾底骨は長くのびてこちらもつるりと鱗が光りますのでまぎれもなくトカゲでした。

トカゲは白いタイルの床を、ビニルのスリッパをペタペタ鳴らしながら歩いていました。ここは病院で、すこしめずらしい病気に罹ったひとたちばかりが入院しています。
トカゲの右手は花びらが九枚ついた赤い花を持っていました。すれちがった少女にもらったものでした。彼女は右目から何本かスルスルと長い蔓がのびて、その先っぽにそれぞれ赤い花が咲いていたのです。トカゲがそれをじっと見ていたら、少女は花を容易くちぎってトカゲにさしだしました。
「たいせつなひとに、プレゼントしてね」
「…、わかった。ありがとう」
会釈をすると、少女はクスクス笑いながらむこうへ走っていきました。トカゲが花をわたす相手は、もう決まっていました。

白い病棟をぬけると銅でできた螺旋階段があります。階段の途中にはいくつか病室があり、トカゲの行きたい部屋はみっつめの個室でした。ドアーは開けっぱなしで、看護婦さんはいないようです。
「てるみ、」
「……」
大きな窓のそばに大きなベッドがあり、そのうえで彼が眠っていました。窓から萌黄色の風がふいて、彼の髪をゆらします。ベッドに手をおくと、ざらりとなにかをおしつぶしたようでした。金平糖でした。ざらざらした白い破片がてのひらにくっついているので、トカゲはそれをすっかり舐めてしまいました。見るとベッドにはほかにもたくさん、色とりどりの金平糖がちらばっています。彼がちいさく胸を上下させるたびに、彼の喉から金平糖がぽろぽろとこぼれます。そこは黄色いリンパ液にまみれて膿んでいるようでした。けれどそれは金平糖になるまえの砂糖ですから、部屋のなかいっぱいに甘い香りがただよっているのです。
トカゲが彼の喉をなめると、彼はううんと唸ってから目をあけました。
「けい、きていたの」
「いまきたばかりだよ」
挨拶のキスをしたあと彼は、昨晩はいつもより痛みがひどくてなかなか寝つけなかったことを話してくれました。トカゲはかなしくなりました。彼はそんなトカゲをやんわりと撫でて、困ったようにわらいました。
彼の病をなおす薬は、トカゲのしっぽです。けれどもトカゲはトカゲですが、半分が人間でできたにせもののトカゲなので、彼を治せる保証はありませんでした。また、トカゲはトカゲでとある厄介な病気だったので、ためしにしっぽをちぎってみる、だなんてことはとてもできなかったのです。
ふたりはベッドにならんで座って、ひなたぼっこをしてすごしました。たまに彼の喉からこぼれた金平糖をつまんで、ふたりで食べました。

次の日、トカゲが彼の病室をたずねると、彼はひどく苦しんでいて、看護婦さんたちが彼を押さえているところでした。トカゲはなにもできずに、ただ泣いていました。しばらくして注射を打たれておとなしくなった彼に、トカゲは言いました。
「ぼくのしっぽをちぎって、プレゼントしたら、てるみはなおるのかな」
「わからない、でもきっとけいがあぶないというのだけはわかるから、どうかそんなことはかんがえないで」
「…、ぼくは、にせもののトカゲだから、てるみのことはなおせないかもしれない」
「きみをひどいめにあわせてまで、なおりたいとはおもわないよ」
「でも、ぼくはにせもののトカゲだから、てるみのことをなおせるかもしれない」
そう言うとトカゲは自分のしっぽを、プチンとちぎりました。トカゲは彼の腕のなかに倒れこみ、彼はトカゲをぎゅうっとだきしめましたが、トカゲのしっぽがあったところからは血がどんどん出てとまりません。トカゲはからだを再生できないし、血も固まらない病気でした。彼は泣いてしまいました。それからトカゲのくちびるにくちづけをしました。それでも血はとまりませんし、涙はどんどん出て息も苦しくなっていきます。トカゲをなおすための薬はしっていました。
「ずぅっとだまっていたけど、ぼくははんぶんかみさまなんだ」
かみさまの血がトカゲをなおす薬です。けれど半分が人間でにせもののかみさまである彼は、自分ではトカゲを助けることなんてできないんじゃないかと不安だったのです。
「ぼくはにせもののかみさまだけど、きみをたすけるためならほんもののかみさまになるから」
だからしなないで、と彼は自分の手首を噛みちぎってトカゲのくちにおしつけました。

白い病室が赤く染まっています。そこは無人でした。花びらが九枚ついた赤い花が、窓辺の花瓶の中で揺れていました。裸足の足跡が二人分、白いタイルにぺたぺたとスタンプされています。足跡は窓へ続いていました。彼とトカゲが病院に戻ることは二度とありませんでしたが、ふたりはしあわせでした。


おしまい




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