クロハが、おい、と声をかけた。視線はコノハの方だから、オレを呼んだわけじゃないらしい。コノハもそれに気付いたのか振り向く。少しして、どうやらなにか思い当たったようで、クロハの隣に座りに行った。言葉数少なすぎだし察しすぎだ。恋人かよ。
「どうしたの」
「なんだ、ちゃんと見てなかったのか、言ったろ」
「……、あ」
「忘れてたのかよ」
クロハがクスクスと笑う。視線はオレの方を向いている。コノハもやたら真剣な顔でオレを見る。…なんだ?なんかしたか?にしてもコイツら距離近えな。くっついてるって感じだ。
「……」
「今は違うからな」
「そうなの?んー……」
「解らねえか」
「うん」
「…お、おい、どうした?オレがなにか──」
耐えかねて声をかけると、クロハは笑って、コノハの服を捲った。ああやっぱいい腹だな…………ん?
「──は?」
「なあ『最善策』、端的に言ってやろうか。君、たまに視線がいやらしいんだよ」
目を細めながら、脇腹をすぅッと撫でる。コノハはくすぐったそうに少し身をよじった。お前の手付きがいやらしいよ。やべえよ。
「コイツは気付いてなかったみたいだけど、…ほら、見えてるか?あれだよ」
「…やらしい…?」
「ああ、いますぐ君をどうしてやろうか、って顔だろ」
「わかんな、い、…くすぐったい」
…なにこのプレイ…?やっぱデキてたのコイツら?オレどうすればいいんだよ?
困惑しかできない状態で、服は更に捲り上げられていって、うわ乳首綺麗かよ、フィクションだけかと思ってたわ。これも蛇のちからなら、うん、もうそういう存在なのではとしか思えない。
白い指は触れない程度を左右に過ぎて、薄く赤みが指したこれも白い肌は小刻みに震える。乳首はツンと、ひどく扇情的で、もう撫で回したいって言うか、あの、悪い、語彙力が足りねえ。一言で言うと「エロさの暴力」か、これオレもしかして試されてる?もう体も気にせずガン見で、思わず生唾を飲んだ。クロハは、妖艶の言葉が似合う笑みを浮かべる。
「はは、『最善策』が君を見て欲情してるみたいだな」
「ぅ、ん、シンタロー…」
そんな目で見ないでくれ、童貞は煽られやすいんだ。もう現時点で既に息子が昂り始めてる。
「お願いでもしてみたらどうだ」
「お願、い…」
「ああ」
「……、シンタロー」
「な、なんだよ…」
ヤバい気がする。クロハは相変わらず性的な笑顔だ。余裕かましてんじゃねえよ、解ってんのか、オレからすればお前だって対象だからな。
コノハは、それまで心なしかクロハにすがるような態勢だったものを、しっかりこちらに向いて、両手を胸の上に添えた。なんでそんな乳首強調してくんの?調教済み?あっあれか、媚びてる?煽られやすいんだっての、やめてくれ。
「むずむずするの、…触って」
「…ダメだろ、ちゃんと主語も言わないと?何を、だ」
「……僕、の、…乳首…」
オプション付きですねありがとうございます。
ここまでされても手出ししないやつは男じゃない。据え膳食わぬは男の恥だ。しかたない、しかたないんだ、お願いされたら応えるしかないだろ!
脳内で言い訳を並べつつ、恥ずかしいのか俯いたコノハの乳首を一瞬なぞり、ピンッと弾いた。同時に体が大きく跳ねる。ああ、なんだろう、もうどうでもいいや。
「あッ…あ、は、…──んッ」
「お前なんでこんな…やっぱデキてんの?」
「僕を見るな。なんの話だ?」
この顔は小馬鹿にされてるな、背中を反らせるな犯すぞ。あと2本腕がほしい。もしくは2体に分かれたい。そして犯す。
それでも乳首を弄る手は止めない。止めれるわけないだろ?オレだって童貞の端くれ、絶対に技術的なものはないのに、コノハは逐一敏感に反応して、もうマジ可愛い。合掌って感じだ。ただでさえ無い語彙力が溶けた。
「ぅ、あ、あ、シンタロー、今の好き…ッ」
「ん?…あ、ああ」
「…おい、また言わせる気か?何が、ちゃんと言うんだよ」
オレは思考が追い付かなかったというのに、クロハは面白そうに的確な言葉を耳元で(ヘッドフォンだが)囁いて、場数を踏んでるんだろうか。これはまごうことなきビッチだな。
「いや、いいよ」
「…ッ、シンタロー?」
「そんなに焦らす趣味もねえって言うか、ほら、まああれだ、…察してくれ」
「……そりゃ無茶だ、なぁ?」
もどかしいのか軽く腰を揺らすコノハの肩に手を置いて、甘えるように体を寄せる。変わらず性的な笑顔で、ああわかった、言うであろうことはわかったよ。
「──ちゃんと言葉にしねえとわからないだろ?」
「……──ッああわかった!わかってたよ!二人とも服脱げ、とりあえず抜いてやる!話はそれからだ!」
コノハは素直に脱ぎ出したというのに、今、完全に童貞の癖に欲張るなとか思った顔してるクロハは、この先泣くまでイカせると心に誓った。
ああ、それにしたって両手に花だ。