hq ヒーロー2
2018.06.13
僕・俺たちのヒーロー(3年より2歳上)
笑顔をくれたヒーロー 月島蛍 主4歳上
ーーーー小さい頃、どれだけ病院に通っても身体が弱いままだった。
咳をすれば、みんなが心配な顔をする。
小さいながらも、みんなのそんな顔を見たくなくて、でもどうすればいいのか分からなくて、不安で押しつぶされそうになって泣き続けていた。
兄ちゃんが遊びに行くのに、公園へついて行った。
兄ちゃんは明るくて元気だから、友達と楽しそうに遊んでる。
「…いい、な。っこほ、こほっ」
咳が止まらなくなってしまって、涙まで出てきた。
兄ちゃんの姿は遠い。
咳は止められないし、周りには誰もいないし、酷くみじめになって、ポロッと涙がこぼれた。
その時、柔らかく背中に振動が来た。
トン、トン、トン。
ゆっくりとテンポのいい振動に涙は止まり、呼吸も落ち着いた。
「はい、これゆっくり飲んで?」
差し出されたのは水。
ゆっくり、ゆっくりと喉へと落としていく。
「うん、落ち着いたね?」
「…うん」
「焦っちゃダメだよ。君は君のペースでやらないと」
「わかってるよっ!」
「おっと、叫んじゃダメ」
「っ!」
知った顔して言われるのは嫌いだ。
僕の苦しみを知らない癖に。
「そうだね、いきなり知らない人から言われたくないね。確かに私は君の辛さを知らない。けどね、君が教えてくれないと周りは分かんないんだよ?」
お説教なんていらない!!!
同じ様なこと何度だって聞いた。
「私と同じ様に言う人今までにいたのかな?え、?あぁ、君分かりやすいから」
「…わかり、やすい?」
「うん、結構表情に出てるよ。ね、教えて?どこがどんな風に辛い?痛い?」
憧れたヒーロー 西谷夕 主3歳上
ーーーーどれだけ泣いても、喚いても変わることのない事実。
昔っから背が低くて他のヤツらにバカにされたのは数知れず。
初めはどうしていいか分からず泣いて、少し慣れてきた頃には刃向かって泣かされ、とうとう勝てた時には変に嬉しかった覚えもある。
けど、それと同時に何か違うって直感的に思ったんだ。
でも、どうすればいいかさえも分からずそのまま小学校高学年まで行った。
衝撃、の一言に尽きる!
「カッケェ…!」
たまたま親に連れられて千鳥山中学校へ行った。
いわゆるオープンスクール。
校舎をうろちょろして、体育館までやってきた。
外は肌寒く感じるにも関わらず、扉を開けると熱気にぶち当たる。
「あぁ、今他校の生徒さんとバレーの練習試合をしているんですよ」
先生の言葉が流れていって、1人に釘付けになった。
「さぁ、取り返すよ!」
「「「「ハイッ!」」」」
威勢のいい掛け声に応える仲間。
「玲香、慌てなくていいよ」
「まな、チャンスを生かして考えなさい」
「さくら、美奈、鈴、信頼してるよ」
サーブを打つ人へ。
トスを上げる人へ。
レシーブを受ける人へ。
さりげなく、ただ、心地よい緊張感で。
「ボールは全員で狙うよ。けど周りを見なさい。声を出しなさい!」
全体のミスを一手に引き受けてカバーする技術がスゲェ。
正直言って、どんな技術をもって動いているのかは分かんねェけど、とにかくあの人がスゴイってのは分かった。
そして、アレは起こった。
チャンスボールを向こうへ上げてしまって、完全に浮いた玉を叩かれた。
あ、落ちる。決まる。
誰もがそう思った。
「繋げっ!!!」
掌1つ分。ソレをボールと床の間へ滑り込ませた。
コンマ何秒の世界で、どんな反射神経してんだって思う。
ずっとボールとあの人を見ていたから、辛うじて見えたその瞬間。
周りはえ、上がったの?っていう雰囲気だ。
優しいヒーロー 及川徹 岩泉一 主2歳上
ーーーー幼馴染のコイツと一緒に練習を積み重ねて、積み重ねて、今では阿吽とも呼ばれることがある。
俺としては言い出しっぺにボールをぶつけてやりてぇが、そんな俺達が仲違いをしそうになった奴の言葉が生きてるから、それに関しては出来ねぇ。
むしろそうなりそうでも、あの人の言葉があるから、俺達の糧にしかならない。
きっかけは、俺達の喧嘩だった。
何が理由だったのか、些細なこと過ぎて忘れた。
「もうお前なんか知るかボケェ!!!」
「俺だって岩ちゃんなんか知るもんか!!!」
見つけた俺のヒーロー 木兎光太郎(小学生) 主2歳上
ーーーーその時はただ魅入ってた。
正直言って、落ち着きのねぇ餓鬼だった覚えはある!後悔はしてねぇけどな!
でも、1回だけ昔見たあの人が忘れられ無かったんだ。
そして、あの人が目の前に現れた。
「元気いーね!バレー好き?」
「おう!お前誰だ?」
「ふふっ、なーいしょ」
「ええー!教えろよ!じゃないと、ふ、ふうしんしゃ?って呼ぶぞ!」
「…あはははは!不審者の間違いでしょー」
「それ!ふしんしゃ!」
「ぶぶー!お姉さんはね、バレーのヒーローなの」
「…ヒーロー?」
「そうそう」
「えーーーーー!」
「なによー」
「ヒーローって男だろ!!」
「あれ、知らないの?」
心底不思議そうに聞かれ、興味惹かれた。
「??」
「ヒーローってね、誰かの心に残ったら」
「うんうん、」
「本物のヒーローになれるんだよ」
"本物"のヒーロー!!
「スッゲェ!」
及川、岩泉邂逅―音駒東京へ―
「え、は?アンタもいくの?え、何しに?」
「…クロ動揺しすぎ」
「え?鉄に言わなきゃいけない?」
「…零もクロで弄らないで」
うんごめん、研磨。
でも鉄の反応面白いから。
「友達にお泊まりに誘われてるからだよ」
「…大学の?」
「そうそう。丁度そう言う話が出てて、ついでに実家帰るからどう?って」
「へー…お友達のオナマエハ?」
「…花巻優香」
「はぁ、無茶すんなよ」
「それはこっちのセリフ。研磨も無理しないようにね」
少し高めのプリン頭を撫でる。
サラサラで気持ちいいんです。
「ん、零もね。気をつけて」
可愛い…!!
甘える様に掌に頭を擦り付けてくるのが可愛い!
「俺は撫でてくんねーの」
「…」
拗ねた様にボソッと呟く鉄。
あぁ、ほんとに、
「可愛いーなぁ」
鉄のジャージを引っ張って頭を下げさせる。
とっくの昔に追い越された身長で若干辛いものはあるけど、可愛い幼馴染みの為に頭を撫でる。
「最終日、烏野高校だっけ?練習試合は見に行くよ。それまで色々学んでおいで」
「おう」「うん」
新幹線を降りて音駒と別れて優香を待つ。
「アノー…お姉さんが如月サン?」
「…?」
下げていた顔を上げれば背の高い男の子。
ピンクブラウンの髪に、戸惑いを隠せない顔。
「そうですよ。優香、寝坊した?」
「エ…俺のこと知ってるんですカ」
「うん、写真みたことある。それに、優香と似てる」
「それは嬉しくないナァ。」
「うん、写真みてそう言った時全く同じこと言った」
「ヘェ…」
「さて、道案内してくれるんだよね?お願いします…っと、お名前は?」
「花巻貴大デス」
「貴大くんね。私、如月零。よろしくね」
それから、荷物持ってくれたりする貴大くんに助けられながらお家に到着。
「あ、オハヨー零」
「貴大くんありがとね」
「い、イエイエ。…無視してイインデス?」
「だって、寝坊した優香が悪い」
「ごめんって!あ、ほら、貴大これから練習でしょ?」
急な話の転換に取り敢えず頷く貴大くん。
まぁ、そこまで優香に対して怒っている訳では無いのだけども。よく寝坊してくれるので反省してくれると嬉しいのだ。
「零、バレー好きよね!?練習見に行ったら?」
「エ」
「いいの?」
「っ、ま、まぁ、ギャラリーは開放してマス」
「じゃあついて行ってもいいかな?邪魔はしないように見てるから」
「…ハイ(拒否権無いですヨネ。姉貴コエーよ)」
一先ずお家の中へ入れて頂いて、花巻家のお母さんにご挨拶して、優香の部屋で寛ぐ。
「あ、これ可愛い」
「でしょっ!一目惚れして買ったヤツ」
トントン
「ん?あ、」
「準備出来たんですケドー」
「あ!ごめんね!すぐ行く!!」
財布や携帯、念の為の秘密道具が入った鞄を持って、玄関へと向かう。
「あ、綺麗な色だね」
「へ、あぁ汚れ目立つんですけどね」
「あははそれは大変だ。でも、似合ってる」
「…ありがとう、ございます」
「ふふ、肌白いから照れてるのわかりやすいねー」
「ちょっ、オネーさん意外と酷い!」
「あ、おねーさんもいいけど、名前で呼んで欲しいな貴大くん」
「…れい、さん」
「はーい。じゃあ道案内お願いします」
「ハイ…(この人強いっ!!)」
若干猫背な貴大くん背を追いながら、テクテクついていく。
「お、松ー!」
「ん?おー花おは、よ?後ろのおねーさんは?」
貴大くんと同じジャージの子。
アヒル口可愛いなぁ。
「如月零、貴大くんのお姉さんと大学一緒でお泊まり中ーね?」
「ハイ、ソウデス」
「なんでカタコト?俺、松川一静」
「ん、一静くんねー」
月島、西谷邂逅ー音駒戦終了後ー
「オイ…」
「ん?」
「いつどこでソイツと何で知り合った!?」
「んー?可愛い子が困った顔してたからお悩み相談に乗ったときからかな」
「おまえなぁ!」
「?可愛い子が困ってたら助ける。これ常識!」
「ねぇ、見つけたよ」
「うん?」
「…ソッチから約束しといて忘れたの」
俯いて泣きそうな顔。
うん、ごめんね。昔出会った時よりしっかり成長した。
「ふふ、覚えてるよ。如月零、君より4歳年上かな?」
「れい、さんね」
「昔みたいにお姉ちゃんでも嬉しいけどね」
「…それはヤダ。やっと名前呼べるんだから、呼びたい…」
「!ちょっと聞いた!?めっちゃくちゃ可愛いんだけど!!!」
「アーヘイヘイ」
「…零さん、連絡先聞いてもいい?」
「うん、喜んで!」
「…ありがと」
「こちらこそ!蛍くん。体調、良くなったんだね」
「うん、」
背伸びして、高い所にある頭を撫でる。
一瞬ピクッと反応したけど、大人しく撫でられてくれる蛍くんが可愛い。
隣からの視線はスルーするよ。
ついでに、あの熱い視線もスルーしてもいいかな?
「あのっ!!」
「っ!」
「こらっ西谷!後から声かけないっ!」
「俺、アンタを追い掛けてました!俺は...ちゃんと追いつけてますか?!」
その熱量、変わらないなぁ。
くるっと後ろを向けば、おもったより近かった。
「まだまだ」
「っ!」
「だって、君が追い掛けてくれる間に私はまだ上を目指してるから。追いつかれる訳にはいかないの。千鳥山中学校、ベストリベロ賞の西谷夕くん」
「オレの名前…」
「知ってるよ。ただ、君が私のどこを見て追い掛けてるのかは知らないけれど、追い掛けておいで。私の向こうにゴールがあると思うのなら」
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