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以下、御礼小話(全3ページ)です。

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季節廻りて何想う
秋冬 長谷川泰三の場合 弐
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外の冷気が身に染みて、長谷川の吐き出した息が白い霞に変わる。
なんとか採用まで漕ぎ着けたバイトの内容は最悪で、既に夜は開け薄暗い朝を迎えている。
財布も寒ければ、しっかり防寒していない衣服も寒い。
自分の肌に冷気が当たらぬ様に長谷川は腕を組み合わせて、家路を急ぐ。

「あー、まさかこんなに落ちぶれるたぁなぁ……」

ひとりごちて、乾いた笑いをあげる。
バイトの内容は車の運転手である。それだけ聞けば他人様の聞こえは良いかもしれない。
ただし送迎するのはキャバクラ嬢だけ。
要するにお水の女が稼いだおこぼれが長谷川の収入になる。
なんだか間接的にヒモになった様で、長谷川の顔は浮かない。
そもそも彼は別居している妻とやり直す事を目標にしているのに、その妻に今のバイトを打ち明ける事も出来ないではないか。
安アパートの薄い玄関を目の前に、彼は深々と溜め息を着いた。
アパートの部屋は暗く、外の気温と変わらぬ様な室温。
申し訳程度にある郵便受けから引き抜いた中身(大体は請求書である)を小さなちゃぶ台に投げ置く。
何事も後ろ向きにしか考えられない時はさっさと寝てしまおうと、押し入れを開けた時。
その請求書の束から、一枚の紙がするりと落ちた。
何の気なしに、拾い上げ目を通す。
長谷川は慌てて、玄関前の小さな郵便受けに急いだ。





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