私と彼は幼い頃からの友達で、幼馴染という関係。
家も隣同士で、そうなれば学区で決められている小学校や中学校は同じで、高校も私と彼は同じだった。
私も彼も部活動には入っていないから、下校も一緒。
彼は私の事をどう想っているのか?
と問われれば『友達』という言葉がぴったりと当てはなる。
それはあくまで彼の場合であって、私は彼をそういう風には見ていない。
ずっとずっと、昔から好きで、それは今でも変わらない。
彼が付き合ってきた彼女が本当に羨ましかった。
その時その時の女の子に劣等感。
「お〜い。カナ?」
目の前でヒラヒラと揺れている彼の手。
「わっ!…何?」
「大丈夫か?ボーっとしてて」
「…ちょっと考え事」
こんな事、私の口から言えるはずが無い。
言ってしまえば、この関係は崩れてしまう。
壊れてしまうの。
それだけは絶対にイヤだ。
彼の横の場所を求めているのに、今以上に近づきたくないと思っている私。
矛盾。
「ほら。また黙っている。何だ、悩み事か?」
心配そうに聞いてくる彼。
その何気無い優しさが私にとってどれ程痛いものなのかは、彼は知らない。
「あ。分かったぞ。誰か好きな人が出来たんだ?!」
『好きな人』という言葉に反応してしまった。
「バカ!!違うって!!」
「顔が赤いぞ〜?図星じゃん」
「うぅ…」
言葉が出てこない。
「まぁ、幼馴染の俺としては、カナに彼氏が居てもおかしくないって思ってんだけど。お前、告られても付き合わないだろ?」
そうだよ。好きでもない男の彼女なんかになりたくない。
「いざっていう時、男がいた方が良いぞ。色々助けてもらえるだろうし」
そんなのいらない。
あなたさえいれば充分なの。
「俺だって、自分の彼女が居るし、いつもお前の事は見てられないんだから」
「幼馴染は、付き合えないもんね…」
私は強がって変な事を言ってしまった。
言わなければ良かったと、言った後になって後悔する。
「…まぁな。オレとカナは付き合えねーだろうな。そもそも、そういう恋愛対象で見たこと無いし」
そんな事、言わないでよ。
「カナだって同じだろ?オレとカナは男女の親友的な存在同士かな?」
悲しかった。
頭で分かっていた事を、こういう風に彼の口から聞いてしまって。
否定していた事も全て目の前に叩きつけられて。
泣きたい。
彼の前では泣けない。
それでも、自分の本当の感情に反映されて、涙が落ちた。
「あ!じゃぁ、また明日ね!!」
運良く、自分の家の前だった。
「あ…。おう」
私は逃げるようにして家の中に駆け込んだ。
ボロボロと落ちる涙。
要するに、私の名前はキミのリストの中に入っていなかったっていう事