「遊びに来たら?」
「はい?」
授業と授業の間の休み時間。
私は目の前に据わっている秋山に水泳部のことを聞いてみた。
すると、急に難しそうな顔をして、
『だって、どう説明すればいいのか分かんないしさ〜。見たほうが早いよ。ウン』
と言われた。
いや、一人で自己解決されても私の脳内は理解できませんけど?
「あ。みっちゃんに言っておいてあげるから、見学しにおいでよ。陽くんにも言っておくから大丈夫だよ」
いやいやいやいや。そういう問題じゃないっしょ!
「ちょっと待って下さい、秋山紘平くん」
「待ちますよ、秋山知美さん」
「だって水泳のこと何も知らないよ?」
「う〜ん。別にいいよ、そんなの」
え?そんなあっさり言い切っていいワケ?
考える素振さえも見せない秋山。
「見れば、水泳って面白いから。迫力あるよ〜」
水泳なんて学校の授業で泳ぐくらいだもんなぁ。
「んじゃ、お言葉に甘えて」
「ん。分かったよ」
電話を始めた。
「あ。みっちゃん?俺です。今日見学者1人連れて行ってもいいっすか?……うん、うん。…はい。分かりました。じゃ、俺と一緒に行くんで。……はい、よろしくお願いします」
アレ?この人、腰が重いので有名じゃなかったっけ?
なんともまぁ、鮮やかに段取りをしてくれてるよ。
「やっほー、陽くん。あ!ちょっと待って!切らないでよ!!……あのさ、今日見学者、連れて来てもいいかな?……うん、多分ね。ってかそうする。絶対に。……うん、分かった。みっちゃんにはもう言っておいたから。…………よろしくお願いします」
電話を終えた秋山は、満足そうな顔をしていた。
「顧問も部長も見学許可してくれたよ」
不覚にもその笑顔が可愛いと思ってしまったのだ。
落ち着け自分!!