春がすぐそこまで近付くこの時期なのに、ラストスパートをかけるかのごとく冬の冷え込みは今、本領を発揮していた。「ゆうーゆうー」「……………」「ゆうー。ゆうってばー」「………………」「………おっるぁ!」この雪にも負けないほど白いユウの肌と対照的にその鼻は真っ赤で、それがなんだかかわいくて「てめぇ…!」 思わずつねってみた。

「ユウ。人が話しかけてんだから返事ぐらいしなきゃだめよ。しかも、なにその不健康な肌の色。凍死しそうじゃん、蕎麦しか食べてないからそうなるの。あ!そう言えばこの間、私が隠してたどん兵衛食べたでしょ!いくら、蕎麦が好きだからって人のものはとっちゃだめなんだよっ。三個も食べるなんて…でもそんな好きならこれあげる!どん兵衛1ダース。ほら、持ってきなって…え、ゆうじゃない…?うそ。アレンだったのか!許すまじ……もうあいつとは縁きってやる!おしまいよ!」

「ってゆう?ゆう?聞いてる?」ねぇ、聞いてよユウ。これであなたとも最後なのよ。今日でこうやって話せるのも最後なのに。

「ゆう、おなかすいたら、これ、たべて」「………こんなに持てるかよ。」そうやって呆れたように笑う顔も最後かもしれないのに。また、会えるかな。気をつけていってらっしゃい 。返事もせず背を向けるあなたはいつも通り。

今日も月が綺麗だったね

と、ひとり私は呟いた。

  
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(2009/02/22〜2013/01/16)
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