ぱちぱち
<跡日>
「若、」
カクン、
「…おら、起きろ」
「ん…」
部活後。
大きな机に向かい合う形で座る俺と日吉。
引退して部長の椅子を日吉に引き渡しはしたものの、数ヶ月は色々と教えてやらなくちゃいけないため今日も二人で残っている。
さっき教えたのは部費のこととメニューの作成プログラムについて。
あとは日吉が部誌を書いて、跡部の家にお泊まり…
だったのだが、
コク、
「おーい、若」
この恋人は部誌を開き、シャーペンを持ったままこっくり、こっくりと船を漕いでいる。
「若、部誌だけは書いちゃえよ。車の中で寝ていいから、な?」
「……、」
「若?」
あーあ。
恋人はすっかり夢の世界に行ってしまったようだ。
部誌を自分の方に手繰りよせる。
まだ何も書かれていない今日のページ。
俺は日吉のシャーペンを拝借すると何行か記入して、監督に提出しに行った。
もちろんきちんと事情も説明して。
何とか切り抜けて部室に戻る。
「帰るぞ、若」
「おい、起きろ」
「キスするぞ」
うん。
俺はちゃんと言った。
後で文句は言わせねーからな。
「…おやすみ、」
そう言って軽く開いた唇にキスした。