死霊1
 2012/03/07 Wed 22:24

レムレスで過去を捏造
あややも捏造

モブがでしゃばる
ヤンデレ、死ネタ、暗い



後悔はしている
反省はしてない













僕には嫌いなものがある。
それはとても醜くて、あざとくて、愚かなもの。
昔、僕がそうであったもの。






「あの館には魔物が住んでいるそうよ。」

「あら、怖い。街に被害がなければ良いけど。」

「そうねぇ。でも最近男子がそこで遊んでいるそうよ。何でも魔物を倒して館から生きて帰ってきた奴がここのリーダーとか。」

「何それ。そんな無謀な事をして楽しいのかしら。」

「さぁ。でもそういう事を言い出すほど暇なんでしょう?」

「馬鹿よねぇ。」



クスクスと上品に笑う女子が廊下で立ち話。男子は何か面白い事がないかと荒探し。
学校ではこれが当たり前で、毎日よく飽きずにできるなぁ、って思う。本当、付き合ってられない。
チャイムが鳴って数分。終礼が終わったからか、皆帰りの支度をせずのびのびとしている。
その反面、僕は急いで荷物をバックに詰め込む。中はもうぐっちゃぐちゃ。ま、あとで整理したらいいや。

「ー、もう帰るのかよ!」

「ん?まぁ、用事があるんだ。」

「最近そればっかだな。んだよ。つまんねーの。」

クラスメイトの男子が不貞腐れたように呟く。でもいつも右手をふってくれるあたり優しい子だと思う。
今度、お菓子持ってきてご機嫌でもとろうかな。一応今持ってるけど、あれはあの人ものだから。

駆け足になる足取りをさらに速める。だんだんと息があがって来る。
早く、早く…!

「きゃ…!」

「うわっ……!!」

ドスと低い音と共に尻もち。い、痛い…。
腰をさすりながら前を向くと同じように小柄な女の子が痛そうに涙目になっていた。あちゃー…。

「ご、ごめんなさい!」

「い、いや…こっちこそごめんね?」

「え…あ!あ…あぁ…あの……、その。」

「ごめんね。急いでいるんだ。」

そう言ってその子の傍を通りぬく。寂しそうにこちらを見ていた気がする。けど。
僕にはやりたい事があるから気にしていられない。


待っててね!絶対美味しいって言わせてやる!!



*


「甘い。」

「それだけ!?」

「それ以上もそれ以下もあるか。」


黒髪の男はそう言って再度自身の本を読みなおした。無表情の似合うこの男。憎めない。
切れ長の睫毛がいつみても美しい、と思った。いや、言うなら全てが美しい。しいて言うなら、服の下から覗く手足が黒く異質なもので、明らかに人ではない所が怖い。でも、僕はそれすらも良いと思ってしまう。人ならざるものは皆美しいのだろうか。なんて思ってしまう。
ただ、その整った唇からはバラの棘よりも酷い言葉がでるのだが。

「せっかく作ったのに。」

「まずくはない。」

「本当?」

「嗚呼。」


でも、根は優しいヒトだから、やはり憎めない。


「今日はこれだけのために来たのか。」

「約束だから。」

「勝手にしてきたくせに…だいたいお前、知らないのか?私がどう言われているのか。」

「知ってるよ。魔物さん…でしょ?それに最近は男子が力試しにこっちに来ているそうじゃないか。馬鹿馬鹿しい。」

「そういうお前は無謀な阿呆じゃないのか。武器も何も持たずここに来て…殺されに来ているようなものだぞ。」

「君はそんなことしないよ。優しい君は。」

「言ってろ。」

「それに僕を殺してもメリットないしね?今読んでる本もこの間僕が持ってきてあげたんだよ?」

「……ふん。」


言い返せなくなったのか彼は本に目を向ける。本当、こういう癖とかわかりやすいなぁ。
彼は本が好き。掃除好きで綺麗好きだから彼の館は綺麗。ただ、薄暗い。光は窓から入って来る太陽の光とたまに灯るろうそくの火だけ。たぶん、明るいのが苦手だからとかそういうのもあるんだと思う。でも、もっと明るい所に来て、沢山の人と関わって、もっと他人に愛されるべきだと思う。
それを本人に言えば拒絶するのは目に見えている事なんだが。




「…僕、帰るね。」

「今日はあっさりだな。」

「ここに来た男子と鉢合わせしても嫌だしね。言い訳考えるの面倒。」

「そういうなら来るな。」

「ヤダネ。来るよ。…あぁ、そうだ。」

「何だ。」


「…気をつけてね?相手が子供とはいえ、手段を選ばないと思う…から。」


「わかってる。」

そう言った彼は小さく笑っていた。





それからテストとか色々重なって行かない日が続いてた。
本当は行きたかったけど、何故か怖くなって行けないのもあった。
彼が怖いんじゃなくて、もっと別の何かに。

一か月たって、館に訪れた。
彼はいなかった。初めて館で埃を見た。
僕のあげた本の数々は放置されていた。








風の噂で"魔物"は本に封印された、と聞いた。






*











「可哀想に。まだ若かったそうよ。」

「とても優秀で…将来有望だったそうじゃない。」

「惜しい人を…哀しむ人も少なくないだろうに。」




「う、嘘よ…そんな………!」



「嗚呼、あの子も泣いて…神様は酷い事をなさる。」

「本当に。」



















それから僕は、とある事故であっけなく死んでしまった。

遺体は酷く綺麗だったそうだ。








*


続く




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