たとえ愛情がなくても4
2012/02/18 Sat 22:17
※病み&暗い、注意
続き物
エピローグ
時期は冬へと傾いていた。
赤々と染め上げた木々には枯れ葉はほとんどない。
寂しげな木が何だか他人事のようには見えなかった。
「こんなところにいたのか。」
「シェゾ…。」
「風邪をひいたらどうするんだ。」
もう1人の体ではないって言っただろ。
そう言い聞かせるように自分の手を優しくとる。彼の手は酷く冷たかった。
彼に引かれるままに枯れ木の道を歩いて行く。少し前に歩いた彼の表情は読み取れない。
先日、学校をやめた。
彼の言われるがままに退学届けを提出して、今は彼が帰って来るまでずっと家にいる。たまに友達が遊びに来てくれるけど、外には出る事はなかった。
彼は相変わらず教師をしていて、たまに帰りが遅い。でもほとんど同じ時間に帰って来る。帰ってから一緒に買い物したりしている。その時も手を繋いでいた。冷たくて、全然温かくならない彼の左手。その指には鈍く光る小さな指輪をしている。私とお揃いの指輪。
今日はたまたま祝日で、散歩したい、と言う私の我が儘から公園に足を運んだのだ。お手洗いに行った彼をよそに、そこにいろ、と言われたベンチから離れた木の下にいたのだ。多分、彼が導く手の行く先は、また、あの家なんだろう。
彼の癪に触ってしまったであろうから。
「、レムレス?」
「ううん……ただ、もう少し、いたかったな、って。」
「…いくな。」
「いかないよ。」
「いくな。」
「シェゾを置いて、どこにもいかないよ。」
いけないんだもの。
強く握られた彼の手が、指輪が、食い込んで少し痛い。そう言えばまた、大切なものを扱うように酷く優しく握られた。
一度止まった足取りが再開される。相変わらず彼の表情は読めない。
あの時、彼が私を捨てたらいったいどうなっていたんだろうか。
それぞれがそれぞれの道を歩んでいただろうか。
今よりはずっと幸せだろうか。
彼は変わってしまった。
何よりも愛しく思った彼の澄んだ青い瞳。
純粋でただ真っ直ぐに私を見ていた瞳。
どんな宝石よりも美しく価値のあるものだと思った瞳。
今はくすんで濁ってしまった。
私が、変えてしまった。
私があの時我が儘さえ言わなければ。
我慢していれば。
もっと幸せだったんじゃないか。
私達の関係が崩れても、彼は救えたのじゃないか。
私なんかに縛られなくても良かったんじゃないか。
私がもっと強ければ、もっと違う何かに変わっていたかもしれないじゃないのか。
愛して、いるのに。
彼は変化を恐れている。
私達の間に何かしらの変化を避けている。
だから、変わる事も出来ない。
死ぬ事も出来ないの。
貴方を思うと。
いっそのこと、
私も狂ってしまえたら良かったのに。
大人と少女と
(側にいることがこんなにも辛い。)
嗚呼、これから長い冬がやってくる。
あけない、冬が。
*
一緒にいること全てが幸せではない
って言うことを伝えたかった話。
分かりにくくてすみません。
シェレムは一緒にいて欲しいけど幸せにもなって欲しい
ただ一緒にいることを求めてない
そういう事を伝えたくて、始めたものでした
9月に書いた癖に一回詰んだけど
悲恋とかヤンデレとか好きだけど、やっぱり笑っていて欲しい
なのであえて暗い話を書きました
9月に一回詰んだけど
シェレム好きが増えますように
また、さらにシェレムが好きになってくれますように
♀レムは個人的な好みの問題です
↓
クリック後、再度ここまでスクロールして下さいませ
※肌色雰囲気注意
何年かたった話
幸せに、したかった(;ω;`)
彼女の全てに救われる。
いつだって、そうだった。
「シェゾ、」
「どうした?何か欲しいのがあるのか?」
「…………うん。欲しいの、あるの。」
最近は寝室から出ることが少なかった彼女は少しやつれたかもしれない。行事とかで忙しかったし、かまってやることも少なくなってしまったことも関係しているのだろう。暗い寝室から出てきた彼女の肌は際立って白かった。
「…、明日で良いなら一緒買いに行くが…?」
「……ううん、今、欲しい。今から欲しいの。」
「…なら今から買いに行く。家で待ってろ。」
「、しぇぞ…、」
肩を隠さない純白のワンピースを纏った彼女はフラフラと自分の膝へと来た。あんまり外に出ないため彼女の肌は本当に白い。どこかの人形よりも白く、美しい。
傷ひとつない体はさぞ見物だろう。
左手首を除いては。
「痩せたか…?」
「わかんない…痩せたかな?」
「今度ケーキでも食いに行くか?カフェとか…あぁ、バイキングでも良いな。」
「…そんなに太らせたい?」
「細すぎて不安になるよりマシだ。」
ふふふ、なんて微笑む彼女は本当に綺麗だ。彼女は自分だけの、ただ1つの。
彼女の腕がスルリと自分の首に巻き付く。自分より熱を持つ彼女の体温は暖かい。その腕に自分の顔を擦り寄せる。
心地が良い。
「シェゾ、欲しいのがあるの。」
「…何が欲しい…?」
「――ん、が欲しいの。」
「…、」
ねだるように首に顔を寄せる彼女は絡める腕を少し強くする。
「、れは」
「別に家にいる事を苦だとは思わないの。貴方がいてくれるだけで、私は嬉しい。嬉しいの。でも、一緒にいるからもっと欲しいと思ってしまうの。一緒いる繋がりが欲しい。」
「レムレス、」
「シェゾ…貴方になら何をされたって怖くない。
だから、欲しい。
シェゾとの赤ちゃんが欲しいよ。」
グラリ、と視界が傾く。
視線の先には彼女の白い首と柔らかい髪と小さな唇。それから白い天井。
あんなにも美しいと思った彼女の全てが、今は目に入る鎖骨が艶かしく見えてきた。
肩から胸へと続くブラもふくよかな胸も、今は、妖しく見えてきている。
流さ、れて…しまう。
「だ、めだ。レムレス、ダメ、だ。」
「……だめ?」
「だめだ。ダメ。駄目、だ。だ、め…、」
「もう、我が儘言わないから。ずっとシェゾの言うこと聞くから。それでも…?」
「あ、…そういう事じゃない。けど、駄目、だ。お前の我が儘なら何だって聞く、さ。お前が頼ってくれるだけで、良い。でも、そういう事じゃ、ないんだ。」
「…シェゾ?」
「た、えられそうもない、から。ひどくして、しまいそうで。」
怖い。
相変わらず白く、眩しいほど美しく、艶かしい肌が目に毒な状況から離れられない自分に困惑する。学生の時に比べ、彼女は大人になった。思い返せば、美しくも、どこか妖艶な美体に心あたりがちらついて、この感情から逃げられなくなりそうになる。
出来る事なら、愛でてみたい。
汚れも一切ない、綺麗な彼女を。
だが、それを許せない自分がいる。
理性が、駄目だと訴える。
駄目。
駄目なのだ。
だ、め
「駄目じゃない。駄目じゃないよ。」
「っ、」
「貴方が私に欲情してくれるなら嬉しい。私、怖くないよ。シェゾも怖くない。怖くないよ。
ねぇ、」
本当に怖い?
「、ぁ」
嗚呼
嗚呼
理性が崩れていく。
一時の感情に流される
(通じ合う幸せに溺れる)
*
やりたかっただけかと言われれば断言しよう
そうだ
でも、苦しい、と嘆く感情から少しでも楽になってほしかったのよ
お粗末様でした
戻る