臆病
 2013.04.25
 
 

恬信


いつもと同じ、学校帰りは信の家でだらだら過ごす。この家のいいところは信が一人暮らしだから親の存在とか第三者の介入がないところだ。
寝転がっていると信が「家主よりくつろぎやがって」とため息をついた。
俺と信の仲じゃんって意味を込めて笑うと、汲み取ってくれたのか否か、頭をはたかれる。

「おりゃっ」

「うわっ、ちょ、てめ」

ごろんと大きく転がって、足を伸ばして隙だらけな太ももに頭を乗せる。

「おい、退け」

「なんでさ」

「重いし痺れんだよ」

「俺の愛受け止めてよ」

「いやだね」

退けと言わんばかりにぺちぺち叩かれたから、反対に思いっきり腰に巻き付く。硬い骨が頬に当たった。

「…かたい」

「たりめーだ、バカ」


柔らかくない。いい匂いもしない。細くもない。太い骨は当たると痛いし身体を覆うのは筋肉ばかり。抱きしめても絵面は暑苦しいだけ。ちょうどいいのはこうしてる時の高さくらいだ。

「しーんー」

ぐぐぐ、と抱きしめる力を強める。骨が頬に食い込む。痛い。もし女の子だったら多分こんなことにはならないのに、と思う。でも一緒にいて落ち着くのは、確かだ。
ふいに、髪の毛が持ち上がる感触がした。

「お前、髪伸びたな」

「あー…そうだね、少し、切ろうかな」

この長い髪を見て、信も俺を女の子と重ねるのかもしれない。でも、同じ考えに行き着いてくれたら、それで。

まだ髪を触り続ける信の手首を掴んで、仰向けになった。腹に力を入れて、わずかに起きる。至近距離で目が合う。キスがしたい。




 
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