Love is not
2013.08.20
(恬信)
射し込む陽光の眩しさに、目をうっすらと開けた。眠る直前までつけていたクーラーの冷えた空気はとっくに夏の暑さであたためられ、うなじや背中に薄く汗をかいている。覚醒しきっていない頭でシャワーを浴びにいこうと思い立ち、ベッドから足を下ろした。足の裏に伝わる感触がいつものかたいフローリングではなく柔らかいクッションのようなものだったことに首をかしげたが、眼前に広がる光景ですぐさま納得がいった。
今日は信が泊まりに来ていたのだ。
信は布団に対して垂直に寝ており、渡したタオルケットは蹴り飛ばされて部屋のすみで縮こまっていた。相変わらずひどい寝相だなあと苦笑よりも呆れが先にくる。
初めて信が泊まりに来たときはひどかった。その日は寒い冬の日で、寒い寒いとあまりに言うものだから一緒の布団で寝たのだが、信に蹴り飛ばされて冷たい床の上で朝を迎えることになってしまった。以来、意地でも布団は分けて寝るようにしている。…それでも被害を食らうことはある。前に一回、今日みたいにベッドと布団に分かれて寝ていたはずなのに、妙な重苦しさに目を覚ますと信が上に乗っかっていたことがあった。上から下に落ちるのならわかるが下から上にあがるとはどういうことなのか。目覚めた信になに、俺と一緒に寝たかったの、と聞いたらバカ言うなと真面目に返された。
「あーあ、だらしない寝顔…」
つま先で軽く触ったり、蹴ったりしても信は全く起きる様子を見せない。んん、と寝苦しそうに寝返りを打つが、それはきっとこの部屋が暑いせいだろう。蒙恬はクーラーの電源を入れてやって、この部屋を後にした。
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