例えば君が傷付いて
 2013.07.10
 
 

恬信


「ほんっとーにすまん!悪かった!」

ベッドの側のイスに腰掛け、両膝に手をおいてガバリと頭を下げる信にいいよいいよと蒙恬が手を振った。その頭には包帯が巻かれ、見ていてこちらが痛くなってしまいそうだった。

「見た目ほどじゃないから大丈夫だよ。ていうか、これが大げさなだけ」

包帯を指差して蒙恬は笑ってみせるが、信はそうとっていないらしい。眉間にシワを寄せたまま、口をへの字にしている。蒙恬の笑い声はどんどん力をなくし、どうしたものかと内心ため息をついた。

そもそも、自分の不注意もあったのだ。
今期の合同体育の時間、男子はソフトボールを行っている。生徒を適当に振り分けた6チームでじゅんぐりに試合を展開していくのだが、その際、ちょうど試合中でバッターだった信のホームランが蒙恬の頭に直撃。当たりどころが悪かったのかそのままぱったんと倒れてしまった蒙恬を、大騒ぎでここに担ぎ込んだ。

しかし、被害者である蒙恬自身は暑いなーやってらんないなー適当に理由つけて休んじゃおっかなーとぼんやり考えていた中での事故だったので、そりゃあ確かに痛かったが、正当に休める理由が出来てラッキーと思っているような、いないような。

ともかくそんなことを考えていたので責める気持ちは全くないどころか、信が気に病んでしまっていることに問題を感じていた。

「…軽い脳震盪と、…まあ、ちょっと切ったけどさ。それだけだよ。…そんな気にすることじゃないって」

むしろ気にされると逆に調子が狂いそうだ。

とは口に出さないもののそう思いながら俯く信の頭を撫でた。

「お前、このあと病院行くんだろ」

「ん?まあ、行けって言われたし。一応ね」

「…俺もついてく」

「え?!なんで?平気だよ」

「まだ危ねえかもしんねえだろ」

真剣な目で蒙恬を見る。そんな目で見られたら、蒙恬としては観念するほかなかった。信は頑固だ。譲らない。お言葉に甘えますと口にして、蒙恬はなにか思いついたのか、続いてそうだと呟く。

「…信、そのあと暇でしょ」

「?ああ」

「甘えるついでに今日泊まってく?」

蒙恬が、にっこりと意味ありげに笑った。









 
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