私は必ず貴方を幸せにして見せる(神威・逆トリップ)
 2016.10.29 Sat 12:10

俺がどんなバケモノだろうと#bk_name_2#は嫌がろうともせず、ごくごく普通に手を差し伸べてくれた。もしも俺に姉と呼べる存在がいたとすればきっと彼女の事を指すのだろう…

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俺は#bk_name_2#を学校の正門で待つ、彼女は18歳で高校生という勉学を学ぶ生徒でもある。#bk_name_2#はいつも早朝出て行き夕方頃に帰って来る。正直一人でいるのは楽しかったし、俺が住んでいる世界とは全く違った所にとても惹かれて興奮した事もあった。今でも飽きていないし、新しい世界を見れる事はとても嬉しい。地球のご飯は…ううん、#bk_name_2#が作った手料理がとても美味しかったからでもあった。

「あれ?神威くん、なにやってるの?」
「んー?#bk_name_2#の事を待ってたんだ、駄目だった?」
「いや…駄目じゃないけど」

赤い大きな日傘を持ち、長く色素の薄い赤髪を三つ編みしている俺はとても目立つのは分かった。俺の年は8歳だし…彼女とは10歳も年齢が違う。少しばかり身長の高い彼女は俺を見下ろして目を丸くさせていた、黒茶色の長い髪に大きな茶色い瞳が俺を映す。

「寒くはなかった?」
「大丈夫だよ」
「そう。でもね…」

呆れるように笑った彼女は俺の首にマフラーを巻いた。先程まで#bk_name_2#が使っていた真っ赤な毛糸のマフラーで、俺は寒々しい彼女の首筋を見上げる。しかし#bk_name_2#は俺の髪の毛をよしよしと微笑み撫でてくれた。

「そんな寒い中私を待ってくれたら風邪を引いちゃうでしょう?」
「でもこれじゃあ#bk_name_2#が風邪…引いちゃうし」
「それは大丈夫。さっきまで学校にいたから…それよりも私は君の事が心配なんだよ。なぜか放っておけないし…直ぐに無茶しそうだからね?」

ぽんぽんと撫でる撫で方が妙にくすぐったくて照れてしまいそうになった。うつむく俺を気にしてくれたのか#bk_name_2#が屈んで今の俺を見ようとした為、思い切り日傘で顔を隠した。

「あれー?#bk_name_2#ちゃんだ、校門でも会えて嬉しいなー…んっ?その子…#bk_name_2#ちゃんの弟くん?」
「!…あ、あずま…くん…」
「あっ…幸久(ゆきひさ)でいいよ?#bk_name_2#ちゃんとは仲良くなりたいし?それで…#bk_name_2#ちゃんの弟?それにしては似てないね。随分親しそうに見えたから…そうなのかなって思えたんだけど。だからといって年下過ぎるから彼氏とかでもなさそう?」
「………#bk_name_2#、行こう」

正門から現れた#bk_name_2#と良く似た制服を緩めて着ている…随分チャラい男の苛立つ話し方に内心舌打ちして、彼女の手を取ろうと伸ばす。するとどこか勝ち誇ったように鼻で笑った男が#bk_name_2#を横目に見てから俺を見下ろすと伝えて来る。彼女に好意を寄せているのは分かるが…お似合いには程遠いと。そう遠回しに俺へ言って来たのだ。ピタリと彼女の手首を掴もうとする俺の手が止まった。

「あの、東(あずま)くん…一言言わせてくれない?」
「ん?どうしたの、#bk_name_2#ちゃん」
「えっと…私は、東くんと神威くんを選ぶなら神威くんを選ぶよ?」
「はっ?」
「だって優しいし、素直だし、何事にも真っ直ぐで…家族想いのいい子なのは分かるから」

#bk_name_2#はそういい目を細めると、俺の手を掴んだ。あくまで自然体な彼女は俺を見下ろすと「帰ろうか、今日の夕飯はなにがいいかな?」なんて楽しげに俺へ質問した。男は#bk_name_2#の手首を掴むと、視界に入れさせようと必死になる。#bk_name_2#はげんなりした顔をして首を傾げていた。

「俺が凄く#bk_name_2#ちゃんの事を…好きだって分かってるよな?」
「それはまぁ…ただ神威くんの事を悪くいう貴方が嫌いなだけ。後私に好かれたいなら…根本的に性格直した方がいいと思うよ?」
「はっ?」
「だからさ…嫌がってるの分からない?色々とくどいし、人を陥れて嘲笑ってさ…なに?東くんが私と釣り合うとは思ってる訳?」

#bk_name_2#がここまで苛立つのを見た事がなかった。俺の握り締める手に力がこもる、あぁ…そうか。#bk_name_2#は俺を傷付けた目の前にいる男に苛立っているのかと納得した。けれど挑発的な言葉の数々に相手の男は顔全体を赤く染め、怒るように彼女の顔を殴ろうと手を振りかざした。ピクリと#bk_name_2#の手が震えた。

「そう言う…血が上ったら直ぐに暴力に走る所や、彼氏でもないのに妙な所を気取って彼氏面する所も…鬱陶しい」
「少し優しくしてやればいい気になりやがって!」

ガッ!と鈍い音が聞こえた。目を見開く彼女と門の前で倒れ込む男の姿があった、殴ろうとする男の前に俺が脚で蹴り上げたのだ。俺からすれば先程の男の動きなど止まって見える同然だった。ちらり…と#bk_name_2#を見上げれば、俺をじっと見下ろしており悲しそうに表情を歪めさせていた。あれ?どうして、そんな顔をするんだろう。きっと褒めてくれるか、感謝されると思っていたのに。

「ごめんね…神威くん、巻き込んじゃって…怪我してない?」
「怪我なんて、寧ろ#bk_name_2#が傷付くのが嫌だっただけだし」

そう俺が言えば、彼女は俺の手を引いて歩きながらに伝えて来る。男が倒れ意識がなく下校する生徒達から注目されていたからだろう、#bk_name_2#は少し歩いた先で立ち止まると屈んで俺を見上げていた。

「私は…神威くんがどんな世界にいたとか、貴方の口からしか聞いた事がないから…余り分からないんだけど」
「…」
「余り自分を傷付けないで?強いといってもまだ子供でしょう?それに貴方はとても優しいから…」

するりと俺の三つ編みした赤毛の髪の毛に触れて撫でた。こちらの世界に来て#bk_name_2#がいつも俺にしてくれた三つ編み…その先には彼女から貰ったヘアゴムがあり、俺と#bk_name_2#が繋ぎ止める唯一のモノであった。

夕日が沈み、夜になる。彼女はそっと俺を抱き締める。暖かい人肌の体温に俺はどうしようもなく泣きそうになった。

「この世界にいる限り…私が貴方を幸せにして見せるよ、神威くん」

日傘が地面に落ちる、#bk_name_2#の姿を確かめながら俺はそっと彼女の首に両腕を回した。


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