むかしむかしとある町に、仲の良い双子の赤ずきんちゃんが住んでいました。


「双子?俺ら、あんま似てないよなーツナヨシ?」

「あ、ダメですよ悟空さん…物語の都合上です。僕達は双子設定なんですよー」

「そか、わかった!」


ある日双子ちゃんは、離れて住んでいるおばあさんの様子を見に、おつかいに行く事になりました。


「おばあさん、て誰だろなー」

「僕達自分の配役しか聞いてませんもんねー」


二人は暢気に歩いていきます。

そして湖の花畑に差し掛かった時、突然草むらがガサガサと揺れました。


「煤I!なんの音!?」

「お、敵か!?俺が相手んなるぜ!」


すると、その草むらから声がしました。


「ヒッ…見つけた見つけた、ようやく見つけた!」


草むらから現れたのは、この森に住むという恐ろしいオオカミでした。


「…あ!俺なんかあいつ見た事ある!」

「あ、ほら前に見た写真の人ですよ!」

「おー、あのゲロ吐いたみたいな名前のやつな!」

「ヒッ…(ピク)」


双子ちゃんの失礼な会話に、オオカミは早くも血管が切れそうです。


「ち、違いますよ悟空さん!確かグロキシニアだったと…」

「な事どーでもいーって!確かアイツ、強いんだよな!!」

「あ、悟空さん!」


いきなり悟空が走りだしたと思うと、掌から如意棒を出しグロキシニアに攻撃をしかけました。


「おりゃあああー!」

「…貴様には用は無い!出でよ雨巨大イカ!」

「わっ!?」

「悟空さん!!」


グロキシニアが悟空の攻撃をよけたと思うと、湖から無数のイカの足が飛び出し悟空に襲いかかりました。


「ヒッ…これが我が匣の力!」

「っ……!なんだよっ、これ!」


悟空が負けずに応戦しますが、イカの足の一本一本は悟空より大きい上、それが無数にあるのです。
さすがの悟空も劣勢のようです。


「くっ……そおおーー!!」

「悟空さん!!」


大ピンチのその時、悟空を捕らえていたイカの足が千切れ飛びました。

ハイパー化した綱吉が、足を引きちぎったのです。


「えっ…!!」

「なに!?ボンゴレ…貴様!」

「逃げるぞ、悟空」

「う、ええ!?」


そして解放された悟空を抱えると、綱吉は炎を噴射しすごい勢いで飛び去りました。


「逃がさん逃がさん、絶対に逃がさんぞ!!」






そして、そのまま少し飛んだ綱吉はおばあさんの家に辿り着き、ゆっくりと降りました。


「すっっ…げえー!!ツナヨシ、お前すげぇなー!」

「う、え…そんな事ないですよぅ…」

「だって空も飛んだし!すげーつえぇし!」

「え、えへへ…」

「あー、お前とも一回闘ってみてえなー」

「ええ!?無理ですよ、悟空さんには適わないですー!」

「そか?やってみなきゃわかんねえって!」

「や、そのあの……あ、ほら!おばあちゃんの様子見なきゃ!」

「なー、今度でいいからさあー」


食い下がる悟空を後目に、綱吉はドアを開けました。

部屋の中はシンプルで、見る限り誰もいないようでしたが…


「あれ?おばあさんは…」

「あ、あれじゃねぇ?ベッド、誰か寝てるみたいじゃん」


そう言って悟空がベッドに近付こうとした時、


「わああ!?」


突然、綱吉が家の外へと投げ出されてしまったのです。


「えっ…!ツナヨシ!?」

「はははは…!油断したなボンゴレ!」

「あ、アイツさっきのゲロ!」

「グロだグロだ、グロだ馬鹿もの!!…まあいい、私はボンゴレに用があるのだ…ボンゴレリングをよこせ!」


綱吉はたくさんのイカの触手に捕らえられ、身動きが取れません。
更に雨の匣の力で、体がうまく動かないのです。


「く……」

「ヒッ…いい顔だ…そそるぞ、その苦悶の表情!」

「ツナヨシっ!」


綱吉は大ピンチです。

悟空は綱吉を助けようと、家から飛び出そうとしました。
しかし、


ドウン!!


「…え!?」


突然草むらから飛んできたエネルギー体に行く手を阻まれます。悟空が驚いてそこを見ると、ガサガサと茂みが動いて…


「ははははは!行かせませんよ、悟空!」

「げ、やっぱり八戒!」


オオカミがもう一匹出てきたのです。
どうやらオオカミは、おばあさんの家でずっと獲物を待っていたようです。


「そう!意外でしたか?森に住む僕ら狼も双子だったんですよ……僕だって、偶には羊ではなく狼にだってなりますよ!」

「くっそ……つか八戒、ツナヨシがマジでピンチなんだって!どいてくれよ!」

「ふふふ……人の心配なんて余裕ですねえ。ピンチは貴方も同じなんですよ?」

「は……八戒?」

「家に居たおばあさんも既に僕が頂きました!次は可愛い赤ずきん、貴方を頂きます!」

「おーい…」




一方その頃……



「うっ…」

「…ボンゴレリングさえ手に入れれば、お前などには用はないが…ヒッ。少し可愛がってやろう」

「く、そ…」

「クク、無駄だ…雨の匣により、お前の身体活動は低下している。もう目を開けている事すら困難だろう」


グロキシニアの匣兵器のせいで、綱吉は体に力が入りません。
その間にも巨大イカの足が無数に絡みつき、綱吉の体を締め上げます。


「くあっ…!」

「いいぞ…いい声だ…!」

「ああっ!」


そして、その足の一本が綱吉の服の下に侵入しようとしたまさにその時…


ドゴォ!!!


「ぐふぅ!?」


轟音と共に、グロキシニアが地に倒されました。
その頭にはトンファーが刺さっています。


「な……何者…」

「僕の綱吉に何してるのこの変態眼鏡。」

「き…貴様は…」


そこには、猟師の少年が立っていました。
その猟師は愛器であるトンファーで、次々に草食動物を狩っていく事で有名です。


「ひ…ばりさ…」

「…雲の守護者、雲雀恭弥か…」

「今すぐ綱吉を放しなよ変態。」

「ク、クク……ならば、やはりあの噂は本当だったのだな。ボンゴレと雲の守護者はそうゆう仲か…」

「だったら何、」

「ヒッ…!そんな貴様の目の前で、ボンゴレを食すなど最高のシチュエーションではないか!」

「…咬み殺す!!」


一気に力を取り戻し襲いかかるグロキシニアに、トンファーで応戦する雲雀。

二人は息もつかせぬ程激しく戦います。


「くっ…!大体、きみはあのパイナップルの側の女子を狙ってたんでしょ!」

「ヒッ…!そんなもの!性別も常識も、エロとグロの妨げになるものなど私は持ち合わせておらん!」

「ふん…結局雑食なんじゃない!」

「クク…一つの固定観念に捕らわれていては、世界は美しく見えんからな!」

「そんなの、僕は綱吉がいる世界だけで十分だよ!」


ガキィン!キィン!


「ひばりさん…」


二人の攻防が続くなか、綱吉の体に絡んでいる触手が少し緩みはじめました。

その隙を逃すまいと綱吉は力の入らない体を叱咤し、なんとかグローブの炎で触手を焼き切りました。


「なに!?」


それに気を取られたグロキシニアは、一瞬雲雀への対応が遅れます。


「遅いよ」

「ぐあっ!!」


そしてトンファーの直撃を受け、地面に沈みました。


「…ふう。」


雲雀はグロキシニアがもう立ち上がってこないのを確認すると、武器をしまい綱吉に駆け寄ります。


「綱吉っ、大丈夫?」

「はい……ひばりさん…」

「なに?」

「………ありが、とう…」

「え…」


意識が沈みかけていた綱吉は、雲雀に助けられ安心し、それだけ言うと気を失ってしまいました。

そこに、真っ赤になった雲雀を残して…




жжжжж



そして、こちらはinおばあさん宅。


「ふふふふふ…さあ大人しくして下さい、悟空」

「いや…だからさあ…」

「もう8×9フラグは目の前です!逃しませんよお!」


まだこちらののオオカミは元気一杯です。

悟空が八戒の毒牙にかかる、正にその時…


「ちょ、待て八戒ー!!」


飛び込んで来たのは、猟師の青年でした。
その猟師は容姿と話術で、次々に女性を狩っていく事で有名です。
「チッ…双子の猟師の片割れですか…」

「いやいやいや!確かに設定はそう聞いたし、あのガキと双子ってのは気に入らねえけど、それよりもだ!ナニコレ!」

「別に……似合ってますよ?その原始人な感じが悟浄にピッタリで」

「毛皮の腰巻きって、猟師の格好じゃねえだろ!なんであのガキは普通で、俺はこんななのよ!?」


猟師の青年がオオカミと対峙し口論を始めます。
その隙に、悟空はその場を逃れました。


「あーもう、八戒はあんなだし…腹へったし…あ、」


そして部屋に戻ると、おばあさんの事を思い出しました。


「そだ、本当に八戒に食われたのかな?おーいばあちゃーん…」


そしてバサリとベッドをめくると、其処には花柄のナイトキャップをかぶった、眉根を寄せて不機嫌そうに眠る金糸のおばあさんが。


「……あれ?さんぞー…?……居るじゃん…」




「ええい面倒です!猟師のエロ河童、あなたも食べてあげますよ!」

「ちょ、なんかさり気に罵倒しなかったか!?…つか近付いてくんな八戒!」

「無駄ですよ、もう既に8×5フラグも立っているんです!月夜の晩だけだと思うなよ!」

「誰だよ!ちょ、なんかマジ怖いから離れて…!」

「さあ、どうしますか猟師さん……僕の腹でも割いて石を詰めますか? あの日、僕の内臓を腹に戻したアナタが…」

「いやいや、ちょ、落ち着けマジ!」


「ねえ、」


突然声がかかり、二人が見るとそこには綱吉をお姫様抱っこした雲雀が立って居ました。


「僕、もう綱吉連れて帰るから。後よろしく」

「ああはい、お疲れ様でした。」

「え?……え??ちょ、待てって!いまこの状況で帰るか!?」


青年が少年にくってかかります。


「知らないよ。それにあなた達だって楽しそうに群れてるじゃない……咬み殺したいけど、僕は綱吉と過ごしたいからまた今度ね。じゃ」

「ちょっ…!お前らと一緒にすんな!合意じゃないから、つかそんなでもねえからああ!!」


悟浄の叫びは虚しく、雲雀は綱吉を抱えて去っていきました。そして後には、悟浄の悲鳴だけがこだまし続けていました──






(さんぞー。さんぞーってば)

(…ああ?なんだバカ猿か…)

(なんだよ、俺さんぞーを見にきたのにさあ。八戒が食ったってゆうから)

(いや、俺はただあいつにここで寝てろと言われたんだ)

(そーなの?…まあいいや、それよりなんか食いにいこうぜ腹へったーー)

(バカ猿が…本当にお前は胃袋猿だな)

(あ、ひっでえー)

(ま、俺も腹は減ってるがな…)

(??なんだよ三蔵、ジッと見て。早く行こうぜ!)

(………そうだな。)

(あーなに食おうかなあ〜。……つか三蔵、)

(なんだ)

(…頭のやつ、取ったら?)



終わり







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