今年も、ホグワーツに冬がやってきた。
窓から見える中庭にも雪が積もり一面真っ白になった様子に、もうそんな季節になってしまったかと思ってしまう。
最近は冬期休暇に向けての宿題などの準備が忙しく考えている暇もなかったが、やっとの思いで休暇になり静かなこの学校の廊下のせいもあるがなんだか暗い気持ちになる。
今年も結局、何も進めなかったのではないのだろうか、逆に後退したのではないか。
私は今、彼女に償えているのか。
そんな事を考えているうちに自然と足が中庭に向いていたらしい。
あぁ、この場所で奴らと幾度争いをしたのだろう。あの時は憎くて憎くてしょうがなかったのに、あの頃に戻りたいなんて思ってしまうとは私も年なんだろう。それとも、この寒さが私の思考を麻痺させているのだろうか。きっとそうに違いない。私がそんなこと思うはずがないじゃないか。そうだ、きっと
「セブルス!!」
突然、名前を呼ばれ振り返った先にはスプラウト教授の姿があった。なにか、薬草を頼んだったか。覚えはないが、とりあえずは返事をしなければいけない。けれども、
「っ・・・」
なぜだか声が出ない。誰かに呪いでもかけられたか。まさか、今のホグワーツに私に呪いをかけれるような、そんな奴はいない。そんな奴は生涯で奴しか・・・
「セブルスっ!!」
もう一度、さらに大声で名前が呼ばれたと気がついた時には、私の肩をつかみ怖い顔をした教授の顔が目の前にあった。
「・・・ぁ、なにか御用ですかな」
真剣な教授の様子に、やっと出た声は情けなかった。
本当に、私はどうしたのだろう。やはり、この寒さのせいか。
「どうしたのです、セブルス!こんな雪の中で涙を流して・・・」
涙?
普段聞き慣れないその名詞に、手を目元へ持って行くとそこには液体があった。
顔に付いた雪だと言い訳が出来ればまだよかった。だが、それにはあまりにも温かすぎる液体だった。言い訳するのが忍びないほどに。
「なにか、つらいことでもあったのですか?」
心配する教授のそんなやさしい言葉も耳に入ってこない。ただ戸惑うことしかできずに立ち止まったまま。
こんな私を心配してくれる人がいる。だけど、私はこんなにやさしい人にまで嘘をつかなければならない。決してこの胸の内を打ち明けてはならないのだ。それが私の彼女へ出来る唯一の償いなのだ。
いや、何も償えていないのは分かっている。だが、そうでも思わなければ私はすぐにでもこの雪のように解けていってしまいそうで。そんな勇気もない私にはこうする事しかできないのだ。結局は自分を守る事しか出来ないような人間だ。だから、
「なんでもありません。どうぞ、ご心配なさらず。」
そう、素っ気なくいうのが精一杯なんだ。
滑稽な歌を聞かせてよ
もう戻れないのならば、せめてあの時見せてくれた笑顔もう一度。
生徒だった彼のあの・・・なんて、欲深いかしら。
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