「ーで、あるたっくしゅんっ・・・失礼。」

週に一度行われる職員の定例会議でスネイプは授業状況の報告をしていたが話しの最中に、小さなくしゃみをした。
普段から、顔色は悪い方ではあったが風邪を引いたりなどは滅多にしない体質であるため、周りは少し驚いた様子だった。

「セブルス、大丈夫ですか?」
「ご心配なく。」

学生時代から知っているマクゴナガルも珍しいことに、思わず声をかけた。
その、スネイプの隣に座っていた彼も例外ではなかった。


「セブルス、風邪かい?」

会議が終わり各先生が自室に戻り始めるなか、
隣に座っていた彼、ルーピンが声をかけた。

「君、いっつもあんな地下の寒いところに居るからいつかは風邪を引くと思ったんだよねぇ・・・」
「別に、そういう訳ではない。しかもあの部屋は火をつけていれば暖かい故、風邪は引かん。」
「でも、実際引いてるじゃないか。」
「それは・・・」

ルーピンは、沸点が低くプライドの高い彼のことだから、すぐに「引いてない」などと、言い返すと思っていたため少し口ごもる返答を不思議に思った。

「セブルス、何かあったの?僕でよかったら聞いてあげようか!」
「結構。貴様に相談して何になる。」
「いやー、ほら!思い詰めて体調崩してるならさっ」
「誰が、思い詰めていると言った!」
「はははっ、ほら言ったら楽になるよー」

なかなか、話さないスネイプにルーピンは笑いながらしつこく迫った。
埒が明かないその繰り返しに、あきらめたようにスネイプは一冊の古ぼけた図鑑を差し出して話し出した。

「・・・これを見てみろ。」
「なになに・・・なにこの草?」
「草ではない、花だと書いてあるだろ!」
「でも、写真は草しか載ってないよ?」

他のページには色とりどりの花の写真が載っている中、そのページだけは、まだ蕾さえ出ていない状態の写真が一枚載っているだけだった。

「それは冬の夜に、気温、天気、星の位置、周期などの条件がそろった時、開花する貴重な花だ。それ故、写真はまだ一度も撮られてない。」
「ふーん。それで?この周期が最近あったの?」
「あぁ。昔に計算したのをふと思い出してな。見に行ったのだ。詳しい日にちまでは分からんかったが。」
「それで、通って風邪引いたわけ!」

訳を聞いたルーピンは納得したように言いながら、また笑い出した。

「・・・笑うなっ!」
「あはは、ごめんごめん。だけど、なんでセブルスはそんなにこの花が欲しいの?」

スネイプは少し目を逸らしながら図鑑に書いてある一行を指差し、読んでみろと言った。

「なに?えーっと・・・『この花びらから採れるエキスには心に愛をもたらす作用があります』ってセブルス、もしかして愛が欲しいの?でも、愛は摂取するものじゃなくて・・・」
「違う!別に我輩が欲しい訳ではない。ただ、そのエキスではないと作れない薬があってそれを作ってみたかっただけだ。」
「・・・媚薬?」
「何を言い出す貴様は!出来るのは精神安定剤の一種だ!」

予想どおりにルーピンの返答に、だから言いたくなかったんだと言わんばかりの表情でスネイプは図鑑を奪い返した。

「そんなに怒らないでよ!それで結局、花は?」
「・・・だめだった。」
「なんで?計算違ったの?それとも見つからなかった?」
「いや、見つけはした。計算も間違ってはなかった。」
「えっじゃあ、どうして?」

素早く荷物をまとめ始め今にも出て行きそうなスネイプにルーピンはあわてて言った。
そして、スネイプはその作業の手を一瞬止めてルーピンの方に目だけを向けた。

「・・・その花を愛する心がないと開花しないのだ。」

そう、ぽつりと吐いてスネイプは席を立った。

「ははっ、君じゃ愛が足らないってことかい?」

少し馬鹿にしながらルーピンはスネイプに挑発的に質問した。
いつもの彼だったらすぐに怒って反論してくるはず、そう軽く思っていた。
しかし、またしても予想に反してぽつりと、

「・・・そうかもな。」

と、言っただけだった。

(今日のセブルスなんか変・・・風邪のせいかな?)



だってが主食だなんて


私が愛するのは今も昔も彼女だけなんだ。






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