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(篁参りました)


(誰だこのやたらでかい人)
「失礼ですがどちら様で?」
「んん? おわッ!鬼だ!」
「(声もでかい…)地獄に鬼がいるのは当たり前ですが」
「…ああ、此処は地獄だったな」
「? で、誰ですか」
「俺は篁と申す者だ。好きに呼んでくれ。


…鬼にも名があるのなら聞くが」
「僕は鬼男です。あんたは生きた人間のようですけど、どうやって此処に?」
「それは閻魔大お「見つけた篁!って鬼男君も」



「てめぇ仕事ほったらかして何処行ってた」
「それには事情がってちょっ爪!篁!止めて!」
「容赦しませんよッ

っわ!?」
「これで良いか閻魔大王」
「何やって…!」
「流石篁、鬼男君も軽々だね。助かったよ」
「ちょっと!篁さん!?放せこの野郎!」
「はは、鬼の子よ、そのくらいでは痛くも痒くもないぞ。いっそその勇ましい爪で引っ掻いてみたらどうだ」
「うっ…」
「鬼男君、爪で人間は刺せないものね」
「…うっさい!早く下ろせよ!」
「その爪しまってくれたらいいよ」
「…ちくしょう…」
「うん、良い子。篁。下ろしていいよ」
「そらっ」
「イダッ!落とすか普通!?」







(弟分)

「おう、鬼の子」
「鬼男だって毎回言ってんでしょうが」
「そこで何してんだ」
「(ダメだこいつ聞いてない)
見ればわかるでしょう。書類整理ですよ」


「よいしょっと。これか?取りたいのは」
「まぁ、ありがとうございます」
「やっぱお前ちっさいのな」
「あんたがデカすぎるだけだ」
「そう拗ねるな」
「拗ねてないですけど」
「チビでもいいことはあるぞ?沢山可愛がってもらえるしなぁ」
「なんか篁さんに言われてもあんまり説得力ないです」
「それにこんな美しい髪は現世でも見たことがないぞ」
「ちょ、髪触んないでください」
「ふむ。角も真珠色か」
「ひぃ、角、は。やめ、」
「ん?性感帯か角は」

「だーーーーーッ!たかむらァ!俺の鬼男君に何やってんの!?
今すぐ離れなさいッ!」

「誰が"俺の"だ変態野郎ッ」
「ゲフゥッ助けたのに酷男!」
「はははっ愉快愉快!」




(鬼の戯れ)

腕が重い。ほんと言うと腕だけでなく身体全体が動かない。腕は頭上でひとまとめ、鬼封じの札付き。しかも一番強力な黒札だ。
せめてもの抵抗に硬く瞼を引き締めても唇が触れれば開かざるおえなくなる。まだマシだ、目を開けて、そこにいるのがいつも見知ったアイツなら。












「や、…め、ろッ!」
まだ唇や首だけへの愛撫なのに、既に情けない声が出て嫌だ。
止めようとしないこいつを串刺しにしてやりたいが無理で、相変わらず黒い髪がさらさらゆれてくすぐったい。
「どう?気分は」
低く艶めいた、けれど自分の声!これは夢か!?夢なら頼むからさっさと覚めてくれ!こんなことになるのなら、もっと早く爪でも角でも刺しとけば良かったと後悔してももはや後の祭り。

たまには趣向を変えてみようかと夜中に無遠慮に部下の部屋にくる上司。夜にこいつが僕の部屋に来る時点で次の展開なんてだいたい予想出来るだろ。そして予想は未だかつて外れたことがない。
逃げようとしたのにやっぱり閻魔大王のほうが鬼より一枚上手なのか、それとも本領発揮というやつか、ひゅうっと素早く風を切る札が腕に張り付き、呆気なく動きを封じらる。
抵抗するという能力を奪われた僕を寝台に寝かせ、結膜マヤコンと胡散臭さ満点の呪文を唱えたかと思うと白っぽい煙に包まれて姿を現したのは"僕"だった。
せいぜいセーラー大王とかそこらへんのことを想像していたのに。もっと質が悪い。悪すぎる。


顔形はそのまんまの僕なのに、髪と目だけは閻魔を主張する黒と赤。
毎回思うのだけれど、いちいちこんな面倒ことをする意味がわからない。何が楽しいんだ。あいつの言うことには「毎回おんなじじゃつまんないでしょ」だそうだ。
こっちにしてみれば迷惑以外の何物でもないってことがどうしてこいつには伝わらないんだろうか。僕としては毎度普通にしてくれるだけで十分なのだ。
なのに。
つくづく思う。

百年の恋も冷めそうだと。

(たいふういっか)

「なんでアンタがいるんだよ」
「雨も風も流石に凄いよ見てびっしょびしょ」
「じゃあ来ないで下さい、来んな」
「だってせっかくの休校だし?
鬼男君とお家デートにはもってこいでしょ」
「いつもは滅多に出ないくせに」「まぁごたごた言わずに」
「タオルしか貸しませんよ」
「そこをもう一声!」
「…中学ん時のジャージなら」
「やったーありがと!」


「ていうか此処までどうやって来たんだよ」
「自転車と傘は途中で諦めた」
「まじですか」
「愛する鬼男君のためならこんな雨風、なんのこれしき」
「僕は絶対嫌ですけどね」
「え、俺の愛ってそこまで一方通行?」


「はー鬼男君の香りがする」
「キモい」
「君だって俺の服借りて着てる時ひそかに匂い嗅いでたじゃん」
「そんな変態みたいなことしてません」
「またまたぁ〜真っ赤だぞー」
「(心底)うーぜぇー」


「ねぇ今日はさ」
「帰って下さい」
「…死刑宣告」
「明日学校あるんですよ」
「泊めてくれるだけでいいから」
「だって制服は」
「持ってきた」
「なんでそんなに用意がいいんだよチクショー」
「そんなに俺といるのが嫌かよチクショー」


「もちろん僕がベット」
「いわずもがな」
「は?」
「二人で添い寝でしょ」
「大王はベランダがいいですか?」
「いえ室内でお願いします」


「おやすみのチュー」
「結構です」
「今日はデレなし?ツン日?」
「泊めてまでやってんのに不満か?」
「そうでした」

「…でもまぁ」



「これでいいですか」
「閻魔感激…!」
「…おやすみなさい」
「照れちゃって、かわいー」
「ああもう調子のんな!」


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