log2
(覚えていて)
「おはよー小野、河合」
「おはようー」
「おはようございます」
「髪染めたの?」
「これか?いい色だろ?」
「まぁ…よく目立つね」
「鬼男さん、仮にも風紀委員長でしょう」
「この学校に風紀なんてあってないようなもんだからいいの」
「銀、と言うよりほとんど白ですね」
「なんか、わかんねぇけど。この色にしないといけない気がして」
「それにしてもしばらく落ち着きませんね」
「でも鬼男によく似合ってる」
「それには僕も同感です」
「マジで?よかった」
(でもなんでこの色なんだろう)
(白、記憶のかけら)
(謎と強がり)
「どうしたら、君は泣いてくれる?」
「悪趣味な質問には答えません」
「じゃあ転生するときは?」
「そんな先のことは言わないで下さいよ」
「ねぇお願い、君の泣き顔みたいの」
「…変態超して鬼畜に目覚めましたか?」
「心外だなぁ。君にひどい事はしないよ?てかしたことないよね?」
(どの口が言うか)
「じゃあ。大王が死んだときは泣いて差し上げます。喉が裂けるまで声をあげて、体中の水分が尽き果てるまで」
「それじゃあ結局泣いてくれないんだ」
「俺は死ねないから」
そう言って顔を上げたら、泣き出しそうな君に出会った
(3センチメートルの世界)
視界が白に邪魔される。目の前にいるあいつがよく見えない。手を伸ばせばわかる距離なのに、霞むそれにいらいらして眉間の皺が深くなる。
「鬼男君。こっち来てくれる?」
素直に右足左足を交互に動かす。大王が席を立って、そこに座れと指で示してみせた。
右手には銀色の鋏。なんの飾りもなく小振りで質素な作りだったけど、線が細く洗練された形が白く筋ばったあいつの手によく馴染んでいるように思う。
「目、閉じてて」
僕の目の上で二枚の刃が擦れる音がする。シャキン。
シャキン、シャキン、シャキン
小刻みで心地がよくて眠気を誘う音が続く。
「どう?すっきりした?」
床は少し白く染まっていた。さっきより近くに顔があった。
今ははっきり見える。
「…ありがとうございます」
短くなってしまった前髪が風にさらさらと揺れ、僕は心地よさに目を細めた。
(秀才ですから)
「失礼します。
大王起きてますか」
「あぁうん、どしたの」
「ちょっとここ教えて貰えませんか」
「んーどれどれ。
…秦広王秘書採用試験ってあの、鬼男くん?今まで本当にごめんなさい俺が悪かったから。お願いだからほってかないで」
「…閻魔大王さま」
「…?」
「今までありがとうございました」
「え。ちょ、」
「冗談です」
「……目が笑ってないの知ってる?」
「結構効果ありますね、この脅し方」
「…俺はマゾ要素はないからね」
「僕だってないですよ」
「寝屋ではあんなに嬉しそうなのにってイタイ、耳の穴はデリケートゾーンだから勘弁して」
「とにかくここ教えてください」「(うまくあしらわれてる気がするような)
にしても誰が受けるのこれ」
「うちの後輩ですよ」
「で君が家庭教師やってるんだ。
こんな時間に来るからてっきり夜ばいかと思ったよ」
「もう一回耳、いっときます?」
「いや、遠慮しときます」