ある日ライドウは、頻繁にゴウトのことを考えていることに気がついた。
学校へ行けるときはゴウトが途中まで送ってくれるのだが、じゃあ、とゴウトと別れた瞬間からもう頭の中はゴウトのことで一杯なのだ。
ゴウトは自分が授業を受けている間、何をしているのだろうか。
何を考えているのだろうか。
悪魔や近所の犬猫に追いかけられてやしないだろうか。
そういえば、夕飯はゴウトに何を作ろうか。
其処でまだゴウトの好きな物を知らないことに気がついて、何だか妙に焦った。
「…………学校が終わったら、聞いてみよう」
ゴウトのことをもっと知りたい。
好きな食べ物。
好きな季節。
好きな色。
好きな悪魔。
ゴウトは自分の好みなど話してくれたことは無い。
飯だって何時も黙って食べる。
ライドウも、聞いたことは無かった。
何も言わないということは、特に問題がないということだと捉えていた。
つい最近まで、特に知りたいと思ったことも無かった。
だが今はどうだ。
今まで誰かについて知りたいなど思ったことが無かったので、そんな自分にひどく驚いた。
自分はどうしたのだろうと戸惑う気持ちと、ゴウトのことを考えるまろやかな気持ちとが複雑に混ざりあって、なんだか胸が苦しくなる。
授業が厭に長く感じられて、鉛筆を走らせながらも心はまるで上の空で、早くゴウトに会いたかった。