雷堂が寝台に腰掛けて本を読んでいるのを見つけたライドウは、迷わずその膝に頭を乗せた。
「……、おい」
重いぞ。
そう言いながらも、深く腰掛け直して頭が落ちないようにしてくれるのが、またライドウには気に入っている所でもあり、気に入らないところでもあった。
ぼんやり仰向けになると、雷堂が読んでいる本はライドウのお気に入りでもあり、何度も読み返している物だった。
如何にもよく読まれている、といった風体もまた、気に入らない要素でもある。
「……雷堂、僕は、貴方の事が厭いです」
「……そうか」
雷堂はひとつも表情を変えない。
「……嘘です」
「……そうか」
本から目は離さないが、頁は繰らず、根気強く待っていてくれている。
「本当は、好きですよ……すごく」
「……そうか」
沈黙。
「……嘘です……」
「……おまえは面倒くさい奴だな」
雷堂は薄い本を引っくり返して置き、やれやれといった体で頭に手を伸ばしたが、払われた。
「……嘘です…………」
ライドウはなんだかんだと言いながら、払われたままだらりと寝台の上にある白磁の手を取り、自らの頬に添わせた。
「猫被りな奴」
顎の下を擽ると、ライドウは気持ち良さげに目を閉じた。