「なんだって貴方はそうなんです!」
ライドウが叫んで、側にあった消しゴムを掴んで投げた。
「何をする貴様!」
すんでの所で其れを避け、雷堂は同じく側にあった万年筆を投げ返した。
また始まった……、目付け役達は被害が及ばぬうちにと、こそこそ出る準備をした。
小さな言い合いから始まり、何時も二人はこうなのだ。
その辺りの物を手当たり次第に投げる。投げ返す。
「最後に俺たちが投げられた時は驚いたな」
屋上で二匹は未だ言い合う声、物が壁にぶち当たる音を聞きながら丸くなっている。
「目付け役を投げるなんざ、修行が足りんにも程がある」
くるくる顔を洗いながらゴウトは言った。
「馬鹿!雷堂の馬鹿!」
シュッと風を切る音と共に鋏が投げられる。
「ふん、そんな物当たるわけなかろう!」
と、其れは――
「ああ、良く寝た……、お早う、ライドウちゃんたち……っ!?」
愚かにも喧嘩の真っ只中に顔を出した探偵の耳の直ぐ横に刺さった。
刺さった拍子のビイィィン、と震える音に、命の危機を感じた鳴海は、「片付けはちゃんとね……」と囁いてとっとと部屋に引っ込んだ。
「何故何時も何時も僕を苛立たせるのですか!」
「煩い!それは貴様が悪いからであろう!」
一際大きい声がして、パリン、と小気味良い音と共にキラキラと窓の破片が通りに降り注ぐ。
「また硝子屋を呼ばねばならんな」
はあ、と溜め息をつくゴウト。
「彼奴等の喧嘩は周りを巻き込みすぎる」
業斗も珍しく疲れた様に言って、まだ暫くは戻れんな、と一人ごちた。