「ええと……、何にしますか?」
何時もの冷静な態度は何処へやら、そわそわと落ち着かない様子のライドウ。
「う、うむ。……だが、我は此処に来るのは初めて故……ええと、貴様に任せるとしよう」
雷堂も何時もの堂々とした様は何処へやら、目があちこちに泳いでいる。
二人が居るのは、パーラーである。
激しく女給や女性客の視線を感じながら、二人は同じタイミングで溜め息をついた。
そもそもは。
「ライドウ、せっかくだから雷堂ちゃんをパーラーにでも連れて行ってあげなよ。雷堂ちゃん、行ったこと無いって言ってたし。ほら此れお小遣い」
ライドウがそのお小遣いは何処から?と聞く間もなく、初デェトだねぇ頑張ってね、と背中を押されて出されてしまった。
「……では、僕は、このケェキにします」
ライドウが決心を述べる。
「で、では我もそれで」
雷堂も狼狽えながら後に続き、注文した。
「中々、どうして……、居づらさを感じますね」
「大体、貴様は来たことがあるのでは無かったのか?」
「以前、鳴海さんに一度だけで、殆ど初めてです」
ちらりと視線を外せば、顔を寄せあって囁きあう書生に騒ぎだす女性客の姿。
運ばれてきたケーキをつつきながら、居づらさに二人は二度目の溜め息をついた。
ごうとがいれば……、重なる呟きに思わず顔を見合わせれば、また後ろで、きゃあっと小さく叫ぶ声が聞こえた。