累積する感情
 2014/09/07
闇夜の事が大好きな伊勢の話。
乂は囚とお出かけ中です。
夫婦水入らずって奴か(
攻め大好きな受けってむちゃくちゃ可愛い。



早めにお仕事が終わってまだ日が高い内に帰ってくると、珍しい事に闇夜がお昼寝していた。
ソファに腰掛け腕を組み、足下には綺麗に畳まれた洗濯物の山。
きっと少し休憩するつもりが眠っちゃったんだろうな。
そういえば彼は今朝も俺よりずっと早くに起きてお弁当を作ってくれていた。
それだけじゃない。
寝過ごしそうになった俺を嫌な顔一つせず起こしてくれて、毎朝美味しい朝御飯を作ってくれて、笑顔で送り出してくれる。
この家がいつも綺麗なのだって、俺がいない間に闇夜と乂が頑張ってくれているからなんだ。
二人にはいつも感謝してる。
特に闇夜には幼い頃から世話を焼いてもらいっぱなしだ。

(疲れてるんだろうな)

隣に座ってみても彼は一向に起きない。
普段しっかりしているからこそ、その寝顔のあどけなさが際立つ。
周りの皆は大抵、真面目で優しくて頼りになる闇夜しか知らないだろう。
こんな風に、無防備で可愛い闇夜の事を知ってる人なんて、きっと俺と乂くらいだ。
すぅすぅと聞こえ続ける穏やかな寝息に、無性に胸の内側が熱くなる。
何て言うか、抱き締めたい。
いつもは大体俺が抱き締められる側なんだけど、それが嫌って訳ではないんだけど、でもたった今沸き上がっている衝動も嘘じゃない。
あぁもう、可愛いな、可愛いな。
どんなにお仕事で疲れていても、闇夜に「お帰りなさい」って言われたらそれだけで元気になる。
マイナスイオンでも出してるんじゃないかってくらい、闇夜を見るだけで俺の心は癒される。

(好きだなぁ)

何度反芻したか分からない感情。
好きだ好きだと、自分でも恥ずかしくなるくらいに確認してきた筈なのに、どれだけ繰り返しても飽きない。
自分で言うのもあれだけど、「べた惚れ」って奴だね、間違いない。
触れたいなぁ。
こんな事実際に言うのは照れるけど、正直キスもしちゃいたい。
でもそんな事して起こしちゃったら悪いしなぁ。
綺麗な寝顔を眺めながらしばらく考えて、決めた。
疲れてるところを起こすのは気が引ける、でも傍にいたい。
なら一緒にお昼寝しちゃおう!よし決まり!
そうと決まれば善は急げだ。

「……よい、しょっと」

眠りを妨げない様に、そーっとそーっとくっついて、ゆっくりと彼の肩に頭を乗せた。
重さで起きちゃうかな?と心配して横目で様子を窺う。
あ、大丈夫っぽい、寝てる寝てる。
何だか内緒で悪戯を仕掛けている様な気分になってきて、思わず忍び笑いを漏らした。

(起きた時びっくりするだろうな、闇夜)

そのまま目を閉じてみる。
視界が暗転した事で精度を増した耳が、すぐ近くから聞こえる寝息を鮮明に捉える。
呼吸に合わせて穏やかに上下する身体のリズムも、ほわほわとした体温も、俺と同じシャンプーの香りも、全部が間近に感じ取れる。
…何か、予想以上に恥ずかしくなってきた。
思わず目を開けて再び闇夜の方を見る。
相変わらずの寝顔だったけど、肩に寄り掛かった事でより近くになったその距離に頬が一気に熱くなる。
自分から近付いたくせに何やってるんだろ俺。
これで離れたら本当にただの馬鹿でしかない。
それに何より、もったいない。
だから、きっと真っ赤になっているだろう顔色にも気付かないふりを決め込んで、再度目を閉じた。
しかし、一度変に意識してしまったせいで全く眠くならない。
闇夜とはそれこそ子供の頃からの付き合いで、これ以上に接近した事だって何度もある。
だけどいくら経験があっても慣れないんだ。
好きな人にくっ付けるこの何ともいえないむず痒さに。
どうしよう、心臓がバクバクしてる。
まさかこの音が伝わって起こしちゃうだなんて間抜けな事態にはならないよね?ね?
そんなよく分からない心配をしながら、反対にどうしようもなく幸せだ。
隣に座って肩に寄り掛かって添い寝をしているだけ。
でも俺にとってはその「だけ」が堪らなく嬉しい。
へにゃ、と格好悪い笑みが零れた。

「…闇夜…大好きだよ」

度胸が無いから物凄くちっちゃい声でそう告げた。
もう、好きで好きでどうしようもなくて、言わずにはいられなかった。
こんな恥ずかしい真似をしてから思い出してしまったが、そういえば闇夜はたまーにだけど寝たふりをする。
ここで返事でも聞こえたからどうしよう。
とりあえず俺は羞恥で爆発するだろうな、パーン!って。
しかしリビングは俺の一言以降静かなもので、今日の彼は本気で休眠中らしい、助かった。
ホッとしたらそのタイミングを図っていたかの様に眠気が襲ってきた。
もう一度ちゃんと闇夜にくっ付き直してから、俺は意識を手放した。













(気付かない内に、何だか随分可愛らしいものが傍らにいて困りました)

伊勢が寄り掛かってきた辺りで起きていた闇夜は、目を閉じたまま悩み、結局二度寝を決め込む事にした。
本当は、愛らしい言動ばかりとる恋人を抱き締めてやりたいのだが、

(今俺が起きてるって知ったら、伊勢は絶対に恥ずかしがるでしょうからね)

羞恥で爆発してしまうかもしれない彼の事を考えると、動くに動けない。
洗濯物を片付けたり買い物が控えていたりと、まだすべき事は目白押しだったが、もう暫しの間だけこうしていよう。
彼への言及と返事は、ほとぼりが冷めた夜にでも、布団に引っ張りこんで伝えてあげよう。
その時の伊勢のリアクションが簡単に想像出来た闇夜は、声もあげずにただ微笑んだ。
既に眠りに落ちていた伊勢がそれに気付く事はついぞ無かった。



end

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闇伊勢は何の弊害も無くいちゃこらさせられるから堪りません。
伊勢、布団に引っ張りこまれるフラグ立ってるよ。
闇夜だって攻めだからね。

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