今年もまたこの時期が来たかと、壁にかけられたカレンダーを見て綱吉は重い溜め息を吐いた。


綱吉は見習いサンタだ。クリスマスになると数人のチームで地区ごとにプレゼントを配る。経験を積み、一人前のサンタになることが夢。
しかし綱吉は見習い達の中でも落ちこぼれだった。プレゼントを間違って配達してしまったり、配り忘れたり、酷いときにはプレゼント自体を忘れてしまったり。なので見習い達からはダメツナと呼ばれからかわれていた。
だから綱吉はクリスマスという時期が嫌いだった。自分のダメっぷりが嫌でも分かってしまう時期だから。



見習いサンタ達はクリスマス二週間前になり始めると四、五人のグループをつくる。そしてグループのメンバーを本部に申請して自分達が今年、プレゼントを配る地区を割り振られる。
その年で一番プレゼントを配るのが早く、上手であるグループにはボーナスが与えられ、一人前のサンタへの道が近付く。なので同期でも成績優秀な見習いサンタは争奪戦になる。優秀な者がいれば一番になる可能性が高まるし一番のチームにいる自分にもボーナスが与えられるから。
けれど、綱吉は落ちこぼれ。どの人達も綱吉がチームに入るのを嫌がり、断った。"綱吉がチームに入るとそのチームは最下位になる"と言われるほどだった。
去年はどうにかチームに入れてもらったけれど今年は無理かもしれない。そう考えるだけでとても憂鬱な気分になるのだった


しかし、綱吉だってなにも友人がいないわけではない。ダメツナと呼ばれてしまう彼だったが心優しい性格を持ち、誰にでも分け隔てなく接する綱吉には友人がちゃんといた。
けれど、その友人達は成績優秀者ばかり。自分がチームに入れば足を引っ張るのは目に見えている。そう考えると、優しい綱吉は友人に声をかけることなど出来なかった。




そして、クリスマス三日前。綱吉は未だにチームに入ることが出来ずにいた。自分以外の人はもうチームが決まってしまったらしく打ち合わせに勤しんでいるのを見て、気分が重くなる。もういっそ、今年はプレゼントを配るのを辞退しようかな、とさえ考えはじめた時だった、

「沢田綱吉、僕とチームを組みなさい」

唐突にそう言いはなったのは同じサンタ見習いである六道骸だった。



骸はサンタ見習いの中でも軍を抜いて優秀だった。成績は常にトップで毎年のクリスマスでも首位を独占。一人前のサンタに一番近い男だ。そんな彼だから、クリスマス前には引っ張りだこ。自分のチームに入らないかと誘われる毎日。けれども骸は誘いを全て断り妹である髑髏と幼馴染みの柿本千種と城島犬とチームを毎年組んでいた。しかし今年は違った、チームを組んだのは骸を除いた三人と新たにサンタ見習いになったにも関わらず早くも成績優秀者と有名なフランだった。
チームに入れるチャンスだと他のサンタ見習いは躍起になったが、骸はクリスマス三日前になってもチームを組む様子が無い。今年はプレゼントを配らないのではないかという噂さえ流れ始めた頃だった。
ダメツナである綱吉をチームに誘ったのは。



サンタ見習いの間で憧れの存在であると共に、その冷酷な性格から周りから疎遠されていた六道骸。
綱吉もそれは同じで、直接的な接点は無いけれど骸に対して苦手意識を持っていた。大体、骸が自分みたいな落ちこぼれなんて知らないと思っていたのだ。
しかし、どういうことだろうか。骸は自分の名前を知っていて一方的ではあるが話しかけてきている。


「えっと、あの……?」

あまりにも事が突然すぎて頭が追い付かない。首を傾げながらそう言うと骸の綺麗な顔が歪んだ。なまじ美人な骸だ、怒った顔は迫力がある。

「なんです、僕の言葉が理解出来ないんですか?僕とチームを組みなさいと言ったんですよ」

吐き捨てるように言われ綱吉はそれ以上追求することが出来なかった。きっと骸が望んでいるのは答え、それ以外の言葉は受け付けてはくれないだろう。
返事に困り俯く綱吉に骸は綱吉の腕を掴みぐいっと引っ張り、焦れたように言った。

「行きますよ」
「えっ、ど、どこに…」
「本部に決まっているでしょう」

そんなことも分からないんですか?と嫌味っぽく、嘲るように言われ綱吉は泣きたくなった。




その後、本部に行きチームの申請をして無事綱吉と骸はチームとなった。
チーム申請のときに受け付けにいた綱吉の従兄弟であるジョットには意味あり気ににやりと笑われ、後でこのネタでからかわれるんだろうなぁと考えた。

そして、後日ジョットに聞いた話だがあの時点でまだチームを組んでいなかったのは綱吉と骸だけだったらしい。つまり骸がチームに誘っていなくとも強制的にチームを組むことになっていたわけで。それを知った綱吉は何だかやるせない気持ちになった。


「それじゃあオレ寮に帰る、な。」

本部を出て広場まで歩いたころ、綱吉はそう言った。広場は綱吉たちサンタに関係する者たちが住む街の中心にある場所で、サンタ見習いが暮らす寮とは目と鼻の先。綱吉は寮暮らしをしているが骸は違う。そのためここでお別れだと思ったのだ。
しかし、骸はそれを許さなかった。

「何を言っているんですか、僕も行きますよ」

綱吉の腕をがっちりと掴み、綱吉の部屋へ案内をしろと言外に訴えていた。

「そっそんな…!なんで!?」
「なんで?クリスマスまで日にちが無いんですよ?打ち合わせしないでどうします」

決まっているだろうと鼻で笑われて腕を引っ張られ綱吉は半泣きで骸の後をついていった。








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