ゴミ捨て場に巡る朝2(ミク)
2011.10.06
さっきよりも日は動き空の色も深くなってきたのだけど
私は動き出す理由がわからなくてその場に座ったままだった。
どうしたらいいんだろう。
このままずっと動かずにいたらここの周りの機械の様に朽ち果てしまうのだろうか。それはそれでいいかもしれない。
もう壊れかけの私を使う人なんて居ないだろうし。
そのまま機械の残骸の群れを見るともなく目に映していると視界の端で何かが動いた。
ゴミとゴミの間をベージュのキャスケットをかぶってぶかぶかのジャケットを着た人が歩いている。
「あ、あの」
思わず声をかけるとくるりとこちらに振り向いた。
「に、人間!?」驚かれた。
男物のジャケットを着てジーンズを履いているので少年の様にも見えたけどどうやら女性の様だ。私の設定年齢の16歳より少し歳上ぐらいに見える。
「違います。私はボーカロイドの初音ミクと言います」
「ああ、ボーカロイドか。実物は初めて見た」
ボーカロイドを見たことがないなんて珍しい。
私のいた町では一家に一機とまではいかないにしても10人に一人は持ってる人がいた。
「ここに居るってことは君もどこか故障しているの?」
答えるのが辛い問いかけだ…。
「高音の一部が出なくって、あとたまになんですがテンポがおかしくなったりしてしまうんです…」
「そうなんだ、うーんボーカロイドはよくわからないや。私じゃ修理できないと思う」
「でも友達に詳しいやつがいるんだけどそいつなら出来るかも知れない」
「え、修理、出来るんですか?」
そんなこと考えてもいなかった。
「やー私、ボーカロイドは詳しくないからはっきりしたことは言えないんだけど」
私直るのかな?そしたらまたちゃんと歌えるの?
でも今度こそ直らないってわかったらどうしよう。その時こそ本当に誰にも使われなくなっちゃう。
「どうかな、一回見てもらわない?知り合いに聞いてみるよ」
「はい、お願いします…」
このままじゃゴミだし嫌だなんて言えない…。それにもしかしたらよくなるかもしれないし。
「じゃ連絡してから来るまで何日かかかるから、その間よろしく。私は卯野はこべって名前」
というとにっこり笑った。
「よろしくお願いします。あの…卯野さんはここで何してるんですか?」
「私はここのゴミ捨て場の持ち主なんだけど、不法投棄ないか見回ったり
あと、毎日運ばれてくるもんから修理して使える物とか値打ちのあるものとか探してそれでリサイクルとかしてんの」
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